NHKの会長人事より何倍も大事な「本当の課題」 来年4月から受信料未払者への「割増金」は2倍に

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稲葉氏は会長になり、前田氏の改革路線を継承するようだ。「三位一体改革」という、歴史の教科書に出てきそうな呼称の改革で、NHKの「業務・組織・受信料」の3つを一体となって改革するのが会長の使命となっている。

前田氏はこれをかなりゴリゴリ推し進めたので局内には悲鳴を上げる人も多かったようだ。私も前田氏に対して個人的に好感は持てないが、この改革は必要だったのだろうと思う。収入が下がったとか、ポジションが下がったとかが「悲鳴」の中身のようだが、リーマンショック以降、民放も大リストラがありNHKだけ逃れていた。費用の使い方も見直すべきときだったかもしれない。三位一体改革は、その古めかしい呼称以外はさほど問題とは思えない。

改革の先にあるNHKの課題

問題は、もはやそこでさえない。本当の問題はその先に待っている。稲葉氏がもし本気でNHK改革に取り組むなら、前田氏の改革を継承するだけでなく、その先にある課題にまで踏み込まざるをえない。おそらく任期中に解決を迫られる。

それは、NHKはなぜ存在するのか、という根源的な課題。そしてそれに沿った受信料のあり方をどうするかだ。

テレビ放送を支えてきたのは団塊の世代から、その子どもたちである団塊ジュニアまでだ。テレビがどんどん普及し面白くなってきた時代を知っている。だからその価値を強く認識しており、NHKにもある程度「お世話になっている」感覚を持つので、受信料も「まあ、仕方ないかな、頼りにはしてるし」と払ってきた。

だが2030年の人口ピラミッドを見ると、愕然とするほど高齢化が進む。いちばん大きいのは最大の塊だった団塊の世代がはっきり減ることだ。団塊ジュニアさえ50代後半になり定年間近。テレビ視聴と受信料を支えていた世代は社会の中核から外れてしまう。そして団塊ジュニアより下の世代、私はこの層をネット世代と捉えているが、彼らが30代40代になり社会の中核になる。

ネット世代はどれくらい受信料を払ってくれるだろうか。彼らは一部のドラマ好き以外朝ドラも大河も見ない。ニュースはネットで十分。昔は子どもができると「おかあさんといっしょ」をありがたがったが、今はYouTubeやNetflixにいくらでも子どもが好きな番組がある。ほとんど見ない放送局の受信料を払えと言われて納得できるのか。

なのに前田会長は受信料徴収の外注をやめてしまった。企業は販促費用に意外に予算を大きく割くが、受信料徴収の費用は販促費のようなもので、これをなくすと今後じわじわ効いてくるだろう。受信料という曖昧なものを個別訪問で説明せずに徴収できるわけがない。実際、受信料収入は今年度上半期だけでも37億円減ってしまった。

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