NHKの会長人事より何倍も大事な「本当の課題」 来年4月から受信料未払者への「割増金」は2倍に

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さて今回の会長人事の前に奇妙な運動が起こっていた。市民団体が元文科省次官・前川喜平氏をNHK会長に推す署名活動を行ったのだ。4万人分の署名がネットで集まったそうだが、私はこの運動に何の意味があるのか不思議だった。上述のとおりの選考をする次期会長について署名を集めて集会を行っても何の効力もない。選挙ではないのだ。経営委員1人ひとりを説得して回るぐらいの根性でやらないと前川氏が選ばれるはずがない。運動にはNHKのOBもいて、会長選出の仕組みを知っているはずなのになぜ集会で済ませたのか。ハッシュタグを立てて集会の様子が偏ったメディアに拡散されれば効果があると思ったのだろうか。そんなやり方で経営委員に届くはずがなく、「お花畑」と言われても仕方ないだろう。

NHKの報道は本当に政権寄りか

そもそも何か誤解しているようだが、NHKの会長は実際には「政権の犬」ではない。前々会長の籾井勝人氏は失言を切り取られてアベ友と揶揄されたが、実際には梯子を外されて退任を余儀なくされたようだ。次の上田良一会長は、問題になった「かんぽ報道」で現場の側に立って経営委員会と対立し、追われるように退任した。NHKの会長が報道を政権に言われるがままねじ曲げているというのは左寄りの人々が生み出した幻想にすぎない。財界でトップだった人たちが、政治家の言うことに素直に従うはずがないのだ。

では今のNHKは政権寄りの報道をしているだろうか。もはや安倍菅ラインによる圧力は大本の人物が亡くなった今、消え失せた。また経営委員会のフィクサー役だった人物も今年亡くなっている。官邸官僚とNHK上層部の一部の個人的パイプによる圧力も過去にあったようだが、その官僚たちも官邸を去っている。安倍元首相と密な関係と言われていた解説委員もNHKを半ば離れたと聞く。

だからと言って政治的圧力がすべてなくなったわけでもない。前田会長は受信料値下げのやり方で自民党政治家と激しく対立したとの噂だ。だが、少なくとも報道内容については、ひと頃言われたほどではなくなっているはずだ。前川喜平氏がもし会長になり「さあ権力寄りの報道を根絶するぞ」と息巻いても実はやることはないだろう。

私がここで言いたいのは、NHKの問題はもはやそんな次元ではないということだ。

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