NHKの会長人事より何倍も大事な「本当の課題」 来年4月から受信料未払者への「割増金」は2倍に

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さらに、その議論に視聴者を巻き込むことが絶対に必要だ。実は、そこにこそNHKのこれからの活路がある。議論を内に留めずオープンにし、視聴者と一緒に考え、意見を取り込んでいく。それが「公共メディア」の第1歩ではないだろうか。議論に参加した実感を持てれば視聴者は新しいユーザーとなってくれる。国民的な議論を巻き起こす時だ。

ネットインフラ構築と、NHKの責任

もっと言えば、新聞業界、民放界をも巻き込むべきだろう。彼らは何かとNHKの行く末について足を引っ張ろうとする存在だが、それは受信料による運営がうらやましいからだ。「民業圧迫」とNHKをイジめてきたが、今期のローカル局は赤字続出と聞く。新聞も2030年頃にはいちばんの読者だった団塊の世代が少なくなり、いよいよ後がない。2030年前後から、ローカル局も新聞社もバタバタなくなってしまう可能性が高い。

だったら、受信料を「公共メディア料金」に切り替え、NHK自身だけでなく民放も含めたネットインフラにも使うものに進化させる。そんな可能性も含めた議論を展開してはどうか。新聞業界も使えるインフラにして、中に入ってもらうのもありだと思う。

もちろんそれはそれで一部から猛反発を喰らうだろう。炎上上等でとにかく議論をしていくということだ。そうしないと、情報伝達がネットに完全にシフトしたとき、無秩序だけが待っていることになりかねない。正しいことが伝わらない国家の恐ろしさを2022年、私たちは見てきた。安心できる真っ当な言論空間をネットでも率先して構築するのがNHKの責任だ。真剣に取り組む時がやってきている。小さな議論はもういらない。大きな視点で考えたい。

境 治 メディアコンサルタント

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さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

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