病院やクリニックへの受診はどのような場合に考えるべきだろうか。
大塚医師によると、ふけ症状だけで受診する人は少ないが、かゆみ症状が出てくると受診が増えるという。
「頭皮のかゆみで仕事が手につかないなど、日常生活に支障が出るほどであれば、皮膚科専門医を受診してほしいと思います。かゆみはそれほどでもなくても、赤みや炎症がひどいケースや、頭皮から汁が出るようなケースも念のため受診しましょう」(大塚医師)
脂漏性皮膚炎でも皮膚炎が悪化すると脱毛症状もみられることもあるという。炎症が治まれば通常は再び発毛してくるが、炎症が強いと皮膚の組織が線維化して瘢痕(はんこん)化してしまい、髪を育てる毛包も破壊されて毛が生えなくなってしまうおそれもある。そうなる前に早めに受診したい。
医療機関では炎症部位に抗真菌外用薬(ケトコナゾールなど)を塗る治療が中心だ。炎症が強く、かゆみがある場合は、抗炎症作用のあるステロイド外用薬も使われる。
ふけの指摘には気遣いを
自分自身ではなく、家族やパートナーなど、身近な人のふけが気になることもあるだろう。周囲は気になっているが、本人は気づいていないというケースもある。そうした場合に、傷つけないようにさりげなく本人に気づかせるには、どのような声がけをしたらよいだろうか。
「ふけが出ていることを伝えるのはなかなか難しいですよね」と大塚医師。本人にしてみれば、不潔であることを指摘されたようなものであり、傷ついてしまう。
「ただ、ふけが出ているということは頭皮にかゆみも出ているはず。関係性にもよりますが、比較的親しい間柄であれば、ふけには言及せずに『頭かゆくない?』と聞いてみてもいいでしょう。ご夫婦や恋人同士なら、無言でそっと肩についたふけをとってあげてもいいかもしれない。風呂場に薬用シャンプーをさりげなく置いておいて使ってもらうのもいいかもしれません」
デリケートな人間関係でのふけの指摘は難しい。ただ、工夫次第では傷つけずに間接的に気づかせる手段はかならずあると大塚医師は言う。ぜひ、お互いにとって適切な方法をみつけてみてほしい。
(取材・文/石川美香子)
大塚篤司医師
千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら