みやびは水の入ったグラスを星に差し出した。星はその水をぐっと飲み込むと、みやびのほうに突っ伏すように身体を倒した。
「ちょっと!」
慌てて星の身体を支え、ソファ側にもたれかからせる。手間がかかることだ。月曜日だというのに……みやびは自分の運のなさに、ほとほと嫌気が差した。「多々良の狙いはな……うちの会社を乗っ取ることだ」
身体を離そうとするみやびの右腕を星は掴んで言った。
「そんなことはないと思いますよ」
「そのために……グローリープロジェクトを潰す気だ……」
「グローリープロジェクト?」
星の口から聞き慣れない言葉が出たので、適当にあしらおうとしたみやびの動きが止まった。みやびが自分の言葉に関心を示したことがわかったのか、星は大きくうなずいた。
「グローリープロジェクトだ! おまえグローリープロジェクトを知らんのか!」
「知りません……なんですか、それ?」
「俺はあの狸を必ず会社から叩き出してやる!」
質問すると星との面倒な会話が続くことはわかっていたが、聞かずにはいられなかった。好奇心旺盛なみやびの悪いクセだ。
「社長室はなんにも知らんのだなぁ! まぁ三島なんざ先代は相手にしてなかったからな!」
星は、愉快そうに笑った。
「先代は、ご自身の病状が重いことを悟ってから、未来のグローリーゲームスの柱となる極秘プロジェクトを開始されていた。それがグローリープロジェクトだ。ゲームが単なる娯楽ではなく、社会に欠かせないものになるための壮大な計画だ」
星は、まるで近くに司馬山がいるかのように天を見上げて話した。その切れ長の目からみるみる涙があふれる。「俺たちはなんとしてでも先代の遺志を継ぎ、グローリープロジェクトを成就させなければならんのだ………それをだ……」
星はギロリとみやびに視線を移した。その瞳には憎しみが籠もっている。
「あの多々良の狸親父は潰そうとしている! そしておまえはその片棒を担いでいる!!」
とんだトバッチリだ。
「先代の最大の間違いは、あの狸親父を副社長に据えたことだ! 俺はあの狸を必ず会社から叩き出してやる!!」
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