ただの石を1日5000円売り上げた男が悟った真理 人生における本当の「勝者」はお金持ちではない

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ひとつの「システム」に依存しながらお金を得ていると、エラーが起きた時に、大きく負ける。でも「生態系」に頼りながらお金を得ていれば、そこには幾重にも重なった複雑なレイヤーが存在しているのだから、ちょっとやそっとのエラーが発生したところで、大きく負けることはない。もちろん、「生態系」で太く稼ぐことは難しいかもしれないが、その分、負ける時は細い感じでしか負けないのである。

「生態系」を形成することをやめなければ、お金なんて怖くないのだ。そんな示唆を、「無用の石を売る」という行為は、私に与えてくれた。まだ、確信を持つことはできないが。

少なくとも、「経済システム」を作ることより、「生態系」づくりのほうが、ずっと私の性には合っている。

お金をめぐる冒険は続く

空になった盆の上に、石から化けた千円札たちを置いてみる。

石が、お金になった。海岸でただ拾ってきただけの石が、自分が「良き」と思って拾っただけの石が、お金に。

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もしかして、お金の正体って、石なのか? いや、そんなことはないわけだが、それにしても、ますますお金の正体が不明のものとなる。

だいたい、いまこの目の前にある千円札たちも、その実体はただの紙である。これを私は「お金」だと思い込んでいるからこそ、この紙たちはお金として存在できているのである。うーん、なんなんだ、いったい何者なんだ、お金。

私にはまだまだ、お金の正体がわからない。わからないのであれば、冒険を続けるしかない。

こうなった以上、石を売る以外のアプローチを考えなくてはならない。石よりも、もっとしょうもないものを見つけ、それをお金に換えることで、今度こそお金の正体の尻尾を、つかんでみようではないか。

ワクサカソウヘイ 文筆家・構成作家

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わくさかそうへい / Sohei Wakusaka

1983年に馬小屋ではなく練馬に生まれる。文筆業。コラムやルポを主なフィールドとして執筆活動に勤しんでいる。主な著書に『今日もひとり、ディズニーランドで』(幻冬舎文庫)、『夜の墓場で反省会』(東京ニュース通信社)、『男だけど、』(幻冬舎)、『ふざける力』(コア新書)などがある。また制作業や構成作家として多くの舞台やコントライブ、イベントにも携わっている。父の名は「ヨセフ」ではないし、母の名は「マリア」ではないが、曾祖父の名は「金太郎」であり、曾祖母の名は「くま」である(マジ)。

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