第2回:何の変哲もない石をお金に換えた男の超劇的瞬間(11月30日配信)
第3回:石を売ろうとして売れなかった男の超痛い黒歴史(12月1日配信)
「自前の経済システム」への疑い
結局、この日の『手づくり市』で、私は石をひとつも売ることができなかった。
負け戦が終わった落ち武者の心持ちで、背中に影を背負いながら、夕暮れ迫る公園の中、石とカウンターとを片付ける。
「私は、お金に負けている者だ」
そんな意識を、ずっと持っている。
私はタイムカード打刻機に水を注いでしまうような人間だ。すなわち、自分の時間を他人に売ることが極端に苦手な人間だ。雇われることが本来的に性質に合わず、だから何度も就業しては、何度も退職してきた。お金に負け続けながら、切れ切れに生きてきた。
他人に雇われることが苦手な人間が、お金に「勝つ」ために必要なのは、自分自身を自分で雇うこと、すなわち自分だけの「経済システム」を獲得することだ、という言説をよく耳にする。なるほど、たしかに自営業やフリーランスで猛然と稼いでいるっぽい人たちは、やれ仮想通貨だ、やれアフィリエイトだ、と自前の「経済システム」を保有していることをチラ見せしてくる。
このようにお金に負け続けてきた私にも、きっと自前の「経済システム」は必要なのだろうけど、しかし、それをどのように構築したらいいのか、ちっとも見当がつかない。どこにいけばあるんですか、その「自分だけの経済システム」ってやつは? コストコとかに売っているのですか? という塩梅である。
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