石を売ろうとして売れなかった男の超痛い黒歴史 高校時代のバイトで魔が差した後に受けた制裁

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ああ、思い出した。「望んでいない暇」って、苦痛でしかないということを。

その突然現れた空虚な時間の中で蘇ったのは、自分の人生で最も「暇」だった、高校2年生時の記憶だ。

おばちゃんは見ていた

17歳の頃の私は、とあるファミレスでアルバイトをしていた。

学校が終わると、自転車ですぐにバイト先へと駆けつけ、白いコック帽をかぶるなり、「おつかれさまです!」と大きな声で厨房に入り、ガス台に火をつけて、次々とオーダーを片付けていく。若者ならではの、生真面目な勤労態度で、日々のバイト生活に精を出していた

しかし、ある日のこと。私は通っていた高校で追試テストを受けることになってしまった。バイトにばかり熱中するあまり、学業の面がおろそかになっていたのである。その追試テストは筆記式で、解けた者から退席していいルールだったが、私は悪戦苦闘し、ついには教室に自分ひとりだけが残された状態になっていた。

それでもなんとか無理やりに解答用紙を埋め、やっとそれを教卓に提出、ハッと時計を見ると、今日のバイトの始業時間をとっくに過ぎていた。

心臓をバクバクさせながら、自転車をこぎ、バイト先へと全速力で向かう。

途中で携帯電話の存在を思い出し、おそるおそる電源を入れる。バイト先からの鬼のような不在着信履歴が残されていると思われたその画面には、予想外なことになんの表示もされておらず、「あれ……? もしかして、遅刻していること、バレていない……?」と拍子抜けしたような気分になる。しかし、油断はできない。とにかくいまは、バイト先に急がなければ。

ファミレスに到着した時、すでに私は始業時間から90分も遅刻していた。

おそるおそる、店へと入る。ホールで接客をしている同い年のバイト仲間が、私の遅刻を咎める様子もなく「おつかれさま」とにこやかに声をかけてくる。おや、これはもしかして、マジで遅刻がバレていないのでは。見渡せば、店長の姿も、バイトリーダーの姿も見えない。どうやら今日は、奇跡的にこの店を司る者たちが全員休みの日のようだ。

更衣室に向かう途中、厨房を見ると、そこには同僚であるバイトのおばちゃんがただひとり、退屈そうに皿を洗っている様子が確認できた。しめた。今日は客が少ない日で、しかもこのおばちゃんは特に他のバイト連中のシフトまで確認しているような神経質なタイプの人ではない。かつて、カルボナーラがオーダーで入っているのに、シーザーサラダを提供し、それを店長に注意されたら、「だってカタカナの料理って全部同じに見えるんだもん」と言い放った、特殊な雑さを持っているおばちゃんなのだ。

次ページごまかせる?
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事