受験は結局、“投げた”。センター試験当日の朝にも大げんかをする両親を見て、気力が尽きてしまったのだ。限界だった。
「こいつら俺のことどうでもいいんだな、と思って。その日のこと、あんまり覚えてないんですよね、ショックすぎて。友達はみんな『(試験が)できた』とか『できなかった』とか言っていたんですけれど。こんな親から金を借りて大学に行くのもしんどいな、と思って就職しようと決めたんです」
佑太さんは実はこのとき、ある職の内定を得ていた。受かったら大学に行くと先方には伝えてあったのだが、もう一刻も早く就職して家を出たいと思い、気持ちを固めた。
なぜか実家にある「スーパーのカゴ」の山
一見気の毒な話だが、佑太さんはこの選択に「まったく後悔はない」と言う。彼はその後、就職先で特殊な資格を取得し、いまもその道で活躍している。
仕事はきつかったが、それほどつらくはなかった。何しろ家を出ることができたし、それに「みんな一緒に苦労する」ので、高校のときのように「自分だけが苦労している」と感じなくて済んだからだ。
「最近思い出したことがあって。実家に帰ったら、近所のスーパーのカゴがたくさんあるんですよ。『何であるの?』って母に聞いたら『あんた高3のとき、よく持って帰ってきてたじゃない』って。あまり覚えていないんですよね。
当時、自分はすごくまともだと思っていたんです。親がこうだからって、グレて人生を台無しにするのは嫌だと思っていたので。でも今思うと、けっこうヤバいことをやっている(苦笑)。一種の万引きですし、下手をしたら就職できなくなっていたかもしれない」
なお、両親は結局別れることなく、いまでも一緒に暮らしているという。父親の仕事が落ち着き、孫が生まれるなどするうちに、昔ほどけんかをしなくなったようだ。
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