センター試験を"当日に投げた"彼のその後の人生 父の失職と不倫、止まらない夫婦間暴力の末に

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「中学生の頃、父は私に『仕事辞めてもいいかな?』と聞いてくるんですよね。『好きにしたら』って答えると、父は『ほら、佑太もそう言ってるぞ』と母に持って行って、またけんかになる。そういうことが本当に増えました」

だいぶ後から聞いたところ、父親は当時多額の家のローンを抱えていたらしい。

父親が失職したのは、佑太さんが高校1年のときだった。家のローン分の公金を自分の口座に振り込むという横領に手を染めたのだ。

あまりに単純で無計画な犯行は、当然ながらすぐに職場で発覚した。直ちに返金したので刑事責任は問われなかったが、退職は免れなかった。

父の失職で経済的に困窮し、佑太さんは奨学金を借りて高校に通った。子どものときから続けてきた野球や、仲間たちと過ごす時間だけが救いだった。

両親が家を出て行き……

横領が近所で噂になることを怖れた両親は、事件後間もなく家を出ていった。どこにいたのかちゃんと聞けたことはないが、父親は親せきが経営する店で働き、母親は金策のため実家に頭を下げていたようだ。

佑太さんと妹は、この頃母親が関わっていた宗教施設に預けられた。隣町だったのでなんとか高校には通えたが、嫌だなと思うこともあった。

「施設があったのが家と反対方向だったんですよね。学校帰りに逆向きの電車に乗っていたので、『おまえ、どこ行ってるんだよ?』とよく言われていました。『俺はこっちに愛人宅があるんだよ』とか茶化して、深く追及されることはなかったんですけれど。友人も何か察していたのかもしれません」

隠したかったわけではないが、家のことを話して気を遣われるのは避けたかった。何よりも大切な友達との時間を壊したくない、という気持ちが強かった。

自宅に戻ったのは約半年後、父親の再就職がきっかけだった。だが父親はその後も転職を繰り返し、夫婦げんかは激しさを増した。父親は机をひっくり返し、母親に手をあげる。母も気が強いので応戦して、けんかはますますエスカレートした。

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