なぜ「想定外」にこれほど対応できないのか 実は弱かった「ジャスト・イン・タイム」

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私たちの暮らしもレジリエンスを失っていたのかもしれません。「仕事優先で、近所づきあいをしてこなかったことは、平時はよいが、何かがあったときには非常に危ないことではないか」と、東京で一人暮らしをしている知り合いが言っていました。

折れない社員をつくる?

「これまでどおりが続いていく時代」ではなくなったいま、何が起こってもしなやかに立ち直れる力を蓄えておくことが、何よりの保険であり、強みとなります。

 日本でも最近「レジリエンス」という言葉が聞かれるようになってきました。米国などで盛んになりつつある、企業向けの「レジリエンス研修」が日本にも紹介されたりしています。しかし、「折れない社員をつくる」、つまり社員のレジリエンスを高めるとは、どんな過酷な状況下でも会社のために働き続ける人を作るためのものではありません。レジリエンスとは、社員という個別の“要素”の特性ではなく、組織という“システム”の特性なのです。

 組織のレジリエンスを高めたいのであれば、社員や経営陣をはじめとする内外の多岐にわたる環境・動機・行動など、さまざまな要素から成り立っている「組織」というシステムのレジリエンスを高めるアプローチを考える必要があります。

 レジリエンスに注目しているのは組織だけではありません。残念ながら、日本はレジリエンス後発国ですが、レジリエンス先進国では、国を挙げて「国や社会のレジリエンスを高める」取り組みを進めています。

 次回の連載第2回目ではそういったレジリエンス先進国の取り組みを紹介し、日本の国のあり方を考えます。そして、第3回目では、レジリエンスの理解をもとに、自分の人生や暮らしを「何があっても折れない、レジリエンスのあるもの」にするための方法についてお話ししましょう。

 『レジリエンスとは何か』の出版を記念して出版記念セミナーを開催します。レジリエンスの考え方や高め方について、レジリエンスに関わるゲストを交えてのトークを予定しています。お問い合わせ、お申し込みは、幸せ経済社会研究所まで。

枝廣 淳子 幸せ経済社会研究所所長、大学院大学至善館教授

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えだひろ じゅんこ / Edahiro Junko

東洋と西洋の知の融合研究所主席研究員。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。環境・エネルギー問題を機に新しい経済や社会のあり方を研究。レジリエンス(しなやかな強さ)のある幸せな未来の共創をめざし、政府委員会や企業の支援、地方創生に携わる。近著では個人の幸福度を高める生き方のヒントを紹介。

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