「ウェルビーイング」「ダイバーシティ」「心理的安全性」など、職場の働きやすさを高めていこうとする動きが、日本でもよく見られるようになってきた。
しかし、働く個人の幸福を追求した結果、属する企業、さらには個人にとっても、マイナスの結果をもたらす場合があると論じているのが、多くの企業のアドバイザーを務め、「パーパス経営」の第一人者である名和高司教授だ。
本記事では、名和氏に「日本企業が働きやすさを追求する弊害」について、イギリスの経営学者リンダ・グラットン氏の新著『リデザイン・ワーク 新しい働き方』をもとに語ってもらった。
日本企業が30年間、苦戦している理由
『リデザイン・ワーク』は、①理解する、②構想する、③検証する、④行動して創造する、という組織のリデザイン(再設計)の4段階のプロセスが非常にわかりやすく書かれています。
日本人は、④の「何かを行いながら学んでいく」プロセスは得意です。つまり、個別的な事例から一般化していく帰納的なアプローチのことです。
しかし、②の「制約を取り除いて、本当に面白いと思える、ある種の妄想に近い未来を思い描く」プロセスは苦手としています。つまり、前提から結論を導き出す演繹的なアプローチが、現場・現物・現実を重視する日本人にとっては難しいのです。
特に、ここ30年はポジティブな未来を描く構想力が衰えたまま、個別の原因がマイナスをもたらしているから、それをゼロに戻そうと焦って空回りしていたように思います。
著者のリンダ・グラットン氏は、危機感を煽ると組織がフリーズしてしまうから、「自分たちにはこんな未来が作れる」というポジティブな感情が大事だと説いています。
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