「働きやすさ」の追求が企業を傷つけかねない訳 企業が「本当に採用するべき人」の見きわめ方

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こうした活動を重視しているベンチャー企業が出ていますが、年に1度のイベントではなく、せめて2~3カ月に1度ぐらいはみんなでオフにして、同じ空間で同じ体験をするということができるのが理想的です。

未来をポジティブに構想するには

コロナが職場や働き方に与えた影響は大きいと思います。新入社員や上司の顔をお互いに見たことがないという人も、少なくありません。

特に新入社員は、学生の時からそうだったわけですから、本当に個の状態になってしまっています。だからこそ「絆」の価値に早く気づかせる機会が必要でしょう。

そのためには、オンラインのミーティングばかりでなく、信頼と人間関係を作るということを進んでやっていかなければなりません。

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チームのなかで、仕事関連でも、単なる飲み食いではない場をあえて設定することが、上司の重要な役割です。私が企業で行っている研修では、自部門に帰ったら、必ず自分でいろんなことを企画して、実際に何かやってくださいと課題を出しています。

お互いが読んだ本を薦めあったり、グループで座禅や写経などの精神修行に行ってみたり、人によって様々です。とにかく実践が大事です。

私は、「ウェルビーイング」という言葉は現実逃避だと考えています。問題意識を持たずに、今に閉じこもれば、すぐにウェルビーイングの状態になれるかもしれません。しかし、それでは社会課題の解決にはつながらず、社会も自分も成長も繁栄もしません。

ですから私は、「Better Becoming」と表現しています。常により良いものを目指すため、終わりがない。つまり、答えの出ない旅だけれども、そこに向かって努力するということです。これこそが人間らしさの本質ではないでしょうか。

『リデザイン・ワーク』を通じて、一人でも多くの人が働きがいに目を向け、こういう未来を作ろうとまわりに働きかけ、大きく前進していってくれることを願っています。

(構成:泉美木蘭)

名和 高司 京都先端科学大学教授

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なわ・たかし / Takashi Nawa

東京大学法学部卒、ハーバード・ビジネススクールにてMBA取得(ベーカースカラー授与)。三菱商事を経て、2010年までマッキンゼーのディレクターとして、約20年間、コンサルティングに従事。日本、アジア、アメリカなどを舞台に、多様な業界において、次世代成長戦略、全社構造改革などのプロジェクトに幅広く携わる。ファーストリテイリング、味の素、 SOMPOホールディングスなどの社外取締役、アクセンチュア、インターブランドなどのシニアアドバイザーを兼任。近著に『企業変革の教科書』(東洋経済新報社)、『稲盛と永守』(日本経済新聞出版)、『パーパス経営』(東洋経済新報社)がある。

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