「働きやすさ」の追求が企業を傷つけかねない訳 企業が「本当に採用するべき人」の見きわめ方

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求心力を忘れたまま、「個を大事に」「ダイバーシティ」「心理的安全性」などの流行のフレーズに走ってしまうと、それぞれが好き勝手に動いて人が育たず、パフォーマンスが落ちてしまう。本当の「ホワイト企業」にはならず、「ゆるブラック企業」になってしまいます。

重要なのは「働きやすさ」ではなく、「働きがい」です。みんながゆるく、働きやすくするだけでは達成感を得られません。

グーグルやテスラのように、「絶対に出社しろ」とまで言う必要はありません。それでも、彼らはワンチームでなければ、個人としてもチームとしても、パフォーマンスが落ちることをよく知っています。だから、リモートではなくリアルでの仕事を好んでいるのでしょう。

一方、日本は個に走りすぎています。もちろん、個人で働くプロフェッショナルな仕事もありますが、仕事の多くは仲間との団体競技で行われるものです。しかし、チームとしての思いやパフォーマンスをどこまで上げるかということは、忘れられがちです。

企業が本当に採用すべき人たち

私はあくまでも「集合としての働きがい」でなければならないと考えます。そういう意味で、最近流行のジョブ型雇用には反対です。

ジョブ型雇用は、単に仕事の助っ人をレゴブロックのようにはめ込むという話で、ワンチーム感がありません。働きがいは生まれず、自分さえ良ければいいという気持ちに向かいがちです。

リンダ・グラットン氏も、決して個人としての幸福ではなく、チームの仲間と共有できる幸福を念頭に議論を展開していると思います。

しかし、日本人はここをはき違えやすく、「働きがい」を自己中心的なテーマとして考える人が多いと思います。これは乗り越えなければならない大きな課題です。

昨今の就活生の「会社に入りたい理由」として、「自分が成長できる」「学ばせてもらえる」などがよく上位に挙がってきます。失礼ながら、これらは学生気分が抜けていない考え方だと感じます。

自分さえ学習できればよいという感覚の人は帰属意識がなく、すぐによそへ行ってしまう可能性があります。企業側はそうした人物であるかどうかを慎重に見きわめなければなりません。

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