現在、病院でリハビリテーションの作業療法士として働く岡田さん。復学を機に猶予してもらっていた奨学金の返済も、その後は育児休暇中であっても止めずに20年間払い続けた。今を切り開いてくれた奨学金制度には、感謝の思いが強いという。
「奨学金を借りられて家を出ていったからこそ、親の援助を受けずに自立して、親の影響、とくに宗教の影響から離れられたということは大きかったです。高校卒業後もずっと家にいたら、親や宗教からは逃れられなかったと思うんです。自立した生活ができたことで、世界が広がりましたし、今のような生活ができるようになったのでしょう」
一時期断絶していた家族との関係は
こうして、20年近く前に親元を離れた岡田さんだが、今や2児の母となった。肝心の家族との関係はどうなったのだろうか?
「一時期断絶していましたが、父親が病気になったのを機に、私も実家に足を運ぶようになりました。今は近くの県に住んでいますし、職業柄、医療には詳しくなったので、一緒に住むことはありませんが、割り切って付き合うことができるようになりました。
まあ、母親からはいまだに『滅びの日は近い』みたいなLINEは送られていますが……それは全部無視しています。本人が好きでやっている分には構いませんが、子どもたちには押し付けないでほしいですよね。たまに、『孫と遊ぶ』と言いながら、宗教の動画を見せているようですし……。
私は宗教2世として、これまで生きてきてたくさんの苦労を経験してきたので、子どもたちには『世の中にはいろんな人がいて、いろんな考え方があるんだよ』といった内容の絵本を読み聞かせて、可能な限り宗教にはハマらないように伝えています」
奨学金のおかげで、岡田さんは信仰という呪縛から解き放たれることができた。しかし、いくらそこから離れようとも、親との関係がある限り、根源から逃れられることはないようだ。
それでも、狭い世界から飛び出し、大学に進んだことで得た知見とその視野の広げ方は、子どもたちに伝えていくことができるだろう。
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