一方で、孔子の言葉はそれよりも消極的に思えるかもしれませんが、私にはその考え方のほうがしっくりきて、『世の中にはいろんな文化や考え方があって、どちらが正しいと二元論で語れるものではない』と漠然と考えるようになりました」
大学進学は反対されたが、説得して地方の国立大学へ
こうして、徐々に母親の信じる宗教に違和感を持ち始め、距離を取り始めた岡田さんだったが、母親の信じる宗教では大学進学をよしとしていなかった。
「兄の件もあって、いつしか臨床心理士という仕事に興味を持ち始め、大学と大学院で学びたいと思うようになっていたんです。兄を救いたいというよりは、『自分自身が救われたい』という気持ちが強かったのでしょう。通っていた高校も、みんな大学に進学するような進学校だったのですが、母に猛反対されて。成績優秀で進学校を卒業したけど、大学に進まなかった信者仲間を連れてきては、大学進学をやめるように何度も説得してきました。
しかも、当時住んでいた関西圏で、最寄りの私立大学はミッション系の大学ばかり。そういう大学に進みたいと母に告げると『この異端者!』と泣き喚かれました。逆に父は大学に行ってほしかったようで、私の進路をめぐって毎日両親が大ゲンカ……。そんな状態だと、実家から通える大学には到底行けないですよね。いよいよ家からも出たかったので、地元から離れた地方の国立大学に進学を決めました」
とはいえ、もともと大学進学そのものに反対していた母親である。なぜ、地方の国立大学であれば進学を許されたのだろうか?
「母の中には『この子はどうして、自分のように信心深くないのだろう?』という葛藤があり、そこから『この子が宗教2世だから信じきれないんだ!』と思うようになったそうなのですが、それを逆手にとって、私は母に『1世信者として学び直すために、外の世界を見てみたい』と説得したんです。
まぁ、そのためには進学先の地域で行われる宗教の勉強会に参加することを条件として出されましたが……」
家の経済状況はよくなかったものの、高校時代の成績はよかったため、入学金と授業料は全額免除に。しかし、それでも生活費はかかる。岡田さんは日本育英会(当時)から奨学金(無利子)を毎月4万6000円、4年間で総額207万円(通算45カ月)を借りた。
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