「奨学金210万円」借りた宗教2世が抜け出した家 彼女は奨学金でカルトにハマった母から逃げた

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岡田さんは安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者と年齢も近い。優秀な高校に通っていたにもかかわらず、母親が宗教に多額の献金をしていたことで、大学に通うこともかなわず、その後凶行に走ってしまった彼の生い立ちは、ひとごとには思えなかったという。彼女の場合は奨学金を借りて、大学に通うことができた「宗教2世のifルート」である。

罪悪感を感じながら、顔を使い分ける学校と家庭生活

「学校に通うなかで、活動に制限をかけられることが多々ありました。例えば、七夕集会。母の信じる宗教は『異教の風習』を禁じているので、信仰上の理由で七夕集会は参加できず、すみっこに立って眺めているだけでした。

私も小学校低学年までは、ちゃんと教団の教えを守って生きていましたが、高学年にもなるとなんとなく『変だな』と思い始めて、親の前とクラスの前とでは顔を使い分けて生きていくようになります。

それでも、幼い頃から教団から『もうすぐハルマゲドンが来て、みんな滅ぼされる。だけど、信者だけは生き残る』と教えられてきたため、親にバレないような活動をしているときも『自分も滅ぼされるのかな』という罪悪感を感じていました」

前出の安倍晋三銃撃事件の発生後、宗教2世の問題はワイドショーなどでもたびたび報じられるようになった。岡田さんも幼少期はまさにそのような問題に直面した1人だが、母親の信仰に関して、家族は何も言わなかったのだろうか?

「父は母の布教活動を快く思っていませんでしたが、子どもを連れ回すことについてはとくに気にしていませんでした。

ただ、母の布教活動のせいで、4歳年上の兄は家族に対する恨みつらみを募らせます。小学校高学年で不登校になってしまい、家庭内で暴力を振るうようになりました。あまりにひどいので、一時期は家族それぞれ別居することもありました。

また、父は当時会社を退職後、嘱託で復職しており、母は信者を相手に家庭教師をしていたので、経済的にも豊かではありませんでした。きっと、母の信仰がなくても、奨学金は借りることになっていたでしょう」

日常生活は宗教と切り離せない……。そんななか、岡田さんの考え方を変えたのは、学校教育だった。

「学校の国語の授業で、先生が不意に言った『己の欲せざる所は、人に施すこと勿れ』という孔子の言葉に衝撃を受けたんです。母の信じる宗教にも『自分のしてほしいことはみんな、人にも同じようにしなければなりません』という教えはありましたが、それはむしろ『教団だけが正しくて、ほかは邪教』といったものでした。

次ページ進学校を成績優秀で卒業した信者仲間と猛反対する母
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