「奨学金600万円」運に見放された56歳彼の諦念 「お金には困っているけど、後悔はないんです」

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奨学金600万円を借りて、大学院博士課程まで進んだ奥山和人さん(仮名・56歳)。一時は名門国立大学で准教授を務めるも、さまざまな不運に。しかし、自分の人生には納得していると言います(写真:makotomo/PIXTA)
これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。
たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。
そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。

「昨年は交通事故に遭ってしまって。幸い、肩の脱臼程度で大きな怪我ではなかったんですが、日々お金に悩んでいる身としては、保険金が入ったのは助かりました。痛かったし、当たりどころが悪ければ死んでたかもしれへんけど、今はピンピンしてますし、『お金になったから、まあラッキーと考えるようにするか』という感じですね」

今回話を聞いたのは、関西在住の奥山和人さん(仮名・56歳)。奨学金を借りて大学院まで進んだことで、一時は有名国立大学の准教授まで昇り詰めたものの、今は非常勤講師とアルバイトでなんとか食いつないでいるという。

安定を捨て学問の道を選んだ

奨学金借りたら人生こうなった
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「高校卒業後、関西の私立大学に入り、そこで日本育英会から無利子の奨学金を借りました。

といっても、国立大学を再受験して入り直したので借りたのは1年だけで、それも50万円程度です。当時の国立は半期の授業料が12万円程度。

『アルバイトすればなんとかなる額や』と思い、奨学金を借りるのはやめて。そのため、このときに借りた50万円はすでに返済が終わっています」

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