今の年収は、だいたい300〜400万円程度。奨学金の返済額は毎月9000円程度ですけど、ボーナス月には5万円返済しています。ただ、ボーナス月払いだと住民税と重なるので、すべて月賦払いにしてもらえないか相談中です。残り248万円なので完済まであと12年、70歳手前までかかる計算。もう、完全にただの借金ですわ。
だから、東南アジアの大学からオファーを受けたこともあったんですけど、行くのを断念して。というのも、給料だけ聞くとその国では悠々自適に暮らしていける額なんですけど、奨学金の返済まですると足りないんですよ。だから、退職後のことを考えると現状のほうがまだマシやなと思って」
一般に奨学金の返済は、社会人になって半年が経過すると始まることが多い。しかし、奥山さんの場合は、ギリギリ「返還特別免除制度」に当てはまり、准教授の期間もあったため、返済開始が50代以降になったのだ。
なお、この返還特別免除は、JASSOのHPによると全額免除になるには15年の在職期間が必要とのこと。一部免除は5年なので、奥山さんはそこには当てはまった形だ。
そんな彼は現在、非常勤講師とアルバイトでなんとか食いつないでいるという。
「4つの大学で非常勤講師をやっているのですが、そのうちの2つは留学生相手の日本語教育です。今はどの大学も留学生を増やしている時代なんで、海外の大学に一時期いた経験が役に立っています。とはいえ、それらは週に12コマしかないので夜はトラック運転手のアルバイトもやってます。おかげさまで、体力は同級生よりはあると思うのですが、いつまでも掛け持ちは続けられないでしょうな」
長年連れ去った妻と熟年離婚
災難は続く。奥山さんは大学の教授職を追われたうえに、長年連れ去った妻とも熟年離婚することになった。
「元妻とは大学の頃からの知り合いでしたが、付き合い始めたのは大学院に入ってからで。彼女自身が安定した職業だったこともあり、当初は僕にお金がないことは問題にならなかったのですが、年齢を重ねて、子どもが生まれるとそうも言ってられず。仕事がない夫と、一緒にいてもしゃあないと愛想を尽かされたのでしょう。
ただ、奨学金の貸与が終わるのを待って結婚したため、元妻は奨学金返済の保証人のひとりなんですよ。やから、返済を滞らせるわけにはいきません。家族とも関係が途切れたわけではありませんが、子どもたちも大学生と中学生になりました。養育費は毎月払うのではなく、財産分与も併せて一括で払い終わっています」
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