また、アルバイトに励む一方で、大学では熱心に勉強もした。
「入学当初は心理学を学ぶ予定でしたが、心理学は『人の内』に向かって問題解決を目指していく学問に見えてきたんです。でも、私は兄のこともあり、もっと社会など『人と外』とのつながりを持たせていく仕事がしたいと思うようになって。そこから、作業療法士という職業の存在を知り、その方面に進みたいと思うようになりました」
作業療法士になるため、学校に入り直す
身体や精神に障害がある人や、病気やケガなどで後天的に身体が動かしにくくなっている人、あるいは精神的に落ち込んだりした人に対して、その人らしい主体的な作業活動ができるようにサポートしていく仕事である作業療法士。入浴・着替え・排せつなどの日常生活動作や家事動作、就学就労、地域活動、余暇活動……など、作業という言葉が指す範囲は広く、彼らがその人らしい日常生活を送ったり、社会に適応していくことを目標に、身体だけでなく心の面でもサポートしていく。
しかし、作業療法士になるための勉強をするためには、新たに学校に入り直す必要がある。そのため、予備校で働いて、学費を貯めるという算段であった。そして、社会人1年目の10月からは奨学金の返済も始まった。
「返済額は毎月1万2000円。卒業した大学とは別の地域で就職したため、働き始めた当初は、引っ越し代などがかさんで、初めて金欠を経験しました。でも、後にも先にもお金で困ったのはそのときぐらいです」
その後、岡田さんは学生時代に出会った、生まれも育ちも別ではあるが、母親の信じる教団から離脱した2世と結婚。数年後には作業療法士になるため、国立の作業療法士養成の専門学校に入り、3年間、学び直した。
「大学に入り直すような形になるので、奨学金の返済は猶予してもらいました。毎日実習やグループワークでとても忙しく、バイトも土日に少しできるぐらいで、生活費はつねに会社員だった夫に頼っていました。
ただ、それだと対等な関係ではないため、夫には国の教育ローン(金利は1.7%程度)を借りてもらい、『私が大学を卒業して働き始めたら、今度はあなたが仕事を辞めて、好きなことをしてほしい』という約束をしました。行きたいのに宗教2世ゆえ行けなかった大学に行きたいと言っていたのですが、結局、夫は会社を辞めた後に始めた事業がうまくいって、今は大学に通う気はないようです(笑)」
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