野口さん解説「宇宙の法律について知ってますか」 国連加盟国の半数以上が批准、宇宙5条約とは

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ISS参加国は自分たちの提供した構成要素(日本の場合は実験モジュール「きぼう」など)を宇宙物体として登録し、そこで活動する自国の宇宙飛行士を管理することになっています。ですから、アメリカのモジュール「ハーモニー」と日本の「きぼう」を行き来すると、日米をまたいで移動しているともいえます。

物品を移動させれば法律上は輸出入ということになりますが、日本の補給船「こうのとり」から宇宙食を他国のモジュールに持っていっても関税はかかりませんし、そのたびに手続きの書類を書いたりはしないですね。

また、宇宙の活動は常に危険を伴い、どれほど慎重に計画し訓練を行っても、事故や活動が失敗する可能性があります。そうした場合に備えて、お互いに過失による損害の賠償請求を放棄する「クロス・ウェーバー」という原則が設けられています。

宇宙ビジネスを後押しする法整備

私はスペースシャトル、ソユーズ、クルードラゴンと3種類のISSに宇宙飛行士を運ぶ宇宙船に搭乗していますが、このうちクルードラゴンはスペースXという民間企業が開発したものです。

アメリカは宇宙の民間活動に関する国内の法律をいち早く1980年代に整備していて、スペースXのような企業が現れ宇宙ビジネスが盛り上がったのも法律があってこそといえます。

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日本でも同様の民間活動を進めるための法律が必要だという議論がおき、2008年に衛星打ち上げの許認可や、打ち上げが失敗して地上に損害を与えた場合の補償などを定める「宇宙基本法」が成立しました。研究開発を中心としていたそれまでの宇宙活動から、産業振興を含む宇宙ビジネスも視野に入れた法律となったのです。

またこの宇宙基本法には、「工程表」という文書が付属していて、日本が予定している衛星やロケットの開発などが一覧表化されています。

宇宙ビジネスに乗り出す事業者は、独自の衛星やロケットといった事業を始める際のルールがわかりやすくなったわけですし、工程表を見て「新しい人工衛星のデータを使ってこんなサービスを提供しよう」などといった計画を立てることもできるようになったのです。

野口 聡一 宇宙飛行士

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のぐち そういち / Soichi Noguchi

博士(学術)。1996年5月、NASDA(現JAXA)の宇宙飛行士候補者に選抜、同年6月NASDA入社。2005年スペースシャトル「ディスカバリー号」で、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在、3度の船外活動をリーダーとして行う。2009年、ソユーズ宇宙船に船長補佐として搭乗。2020年、日本人で初めて、民間スペースX社の宇宙船に搭乗、約5か月半、ISSに滞在した。4度目の船外活動(EVA)や、「きぼう」日本実験棟における様々なミッションを実施し、2021年5月、地球へ帰還。主な著書に『どう生きるか つらかったときの話をしよう 自分らしく生きていくために必要な22のこと』アスコム刊がある。

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