プロゴルファー「湯原信光」65歳の今、博士目指す訳 ツアー優勝経験もある一流プロが異例の挑戦

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ツアーでは7勝を挙げ、50歳になってシニアツアーに入り、1勝している。2013年に東京国際大学ゴルフ部監督に就任。プロ入りしてからはケガや故障に悩んできた。2年前にはコースで転倒して左足首の腓骨を骨折して今もボルトが入っているなど、最近は思うようなゴルフができていない。学生を指導しながら、大学院進学という選択をした。

ツアーで実績を残しながら、大学院に入って新たに知識を広げたプロはこれまでにもいる。ツアー6勝を挙げて、マスターズにも出場した金子柱憲は2011年に早大大学院スポーツ科学研究科に入学し、修士号を取得。レギュラーツアーを主管する日本ゴルフツアー機構(JGTO)で2年間選手会長を務め、ツアー2勝を挙げて今年からシニアツアー入りした横田真一も、2013年に順天堂大医学部大学院に入って修士号を取得している。

湯原は父が工学博士だったこともあって「周囲に医者や研究者が多かった」という環境もあり、現在ゴルフ部監督と共に特命教授を務めている東京国際大の理事長・総長から「ドクター(博士)を取ってほしい」という要望もあった。コロナ禍もあり、大学院受験を試みた。東京国際大にスポーツ系の大学院がなく、常時通学は難しいため、通信制を探して母校日大の大学院に決めた。

プロゴルファーの湯原信光
母校である日大の大学院に進学した湯原信光(写真:本人提供)

博士号の取得は最短でも70歳

願書提出にあたって、「ゴルフ競技における正しい運動技術確立に向けた運動学的考察」という自身のテーマを詳しく文書で提出。昨年11月に小論文による入学試験を受け、今年4月に入学した。「総合社会情報研究科 博士前期課程 人間科学専攻」と書かれた学生証をうれしそうにみせた。

「年に何回か、スクーリングで大学に行って授業を受けることもある。最初に行ったときはたぶん僕が一番年長だった」と言い、「哲学とか、いままでやったことがない授業は難解でね」と笑った。

1年目は課題をレポートで出す形式だそうで、スポーツ医学の教科書を使うなどしてレポート提出を繰り返し、最終的に論文にまとめていくという。博士号取得は最短でも70歳になる。博士号を持つプロゴルファーが初めてかどうかは不明だが、ツアーで優勝した選手では聞いたことがない。

博士号を取得して、どうしたいのだろうか。

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