プロゴルファー「湯原信光」65歳の今、博士目指す訳 ツアー優勝経験もある一流プロが異例の挑戦

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「指導方法をテーマにしたい。これまで自分が経験してやってきたこと、ケガなど傷害への対応などが、正しかったのかどうかの裏付けを知りたい。より鮮明にして、学術論文として後世に残したい」(湯原)

今年10月にはYouTubeに「湯原信光ゴルフ講義」を開設。「グリップから始まって、通常のレッスンではなく、学生に講義するような形で始めた」(湯原)。ツアーで40年以上戦った後に、新たなキャリアに挑戦するというのは、プロゴルファーにとっては「セカンドキャリア」に相当するかもしれない。

プロゴルファーのセカンドキャリア

引退のないプロゴルファーには、セカンドキャリアという考え方は希薄かもしれないが、男女とも若年化しているので、30代でツアーに出られなくなる=賞金を稼げなくなる選手もこれから増えてくるだろう。そうなれば、事実上のツアー引退ともいえる。

ほかのスポーツでは、例えばプロ野球では実績を残して「引退」という言葉で球界を去れる人はいるが、多くは「戦力外通告」など道半ばで球界を去っていく。サッカーでも同様だ。大相撲も引退というが、かつては引退とはいわず「廃業」という言い方だった。

これらのプロスポーツは、20代、30代で引退するのがほとんどだ。そこで引退した後のセカンドキャリアというのが近年クローズアップされてきており、テレビドラマの題材にもなっている。

プロまで極めた人の多くは、その競技ばかり子どものころからやっていて、いわゆる「つぶしがきかない」というケースは少なくない。若くして引退を余儀なくされたらセカンドキャリアをどうするかは難しい問題だ。

プロゴルファーも小中学生のころからゴルフばかりで過ごしてきた人が多い。誰もが湯原らのように大学院に入ることはできないだろうが、学ぶ場所はほかにもある。新たな資格、知識を得ることは、セカンドキャリアに結び付くかもしれない。

65歳の挑戦がゴルフ界にとっての1つのモデルになれば、あとに続いている選手たちにとってもいい指標になるだろう。(文中敬称略)

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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