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今や謝罪会見は「エンタメ化」、危機管理PRの難題 SNS時代に問われるインシデント広報の瞬発力

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企業の存続が危ぶまれるようなトラブルが起きた際、影響を最小限に抑える「危機管理広報」。そのあり方が目下、激変している。

ネット中継されるKADOKAWAの謝罪会見を表示したスマートフォン
謝罪会見のネット中継は、1つのエンタメのように消費される(撮影:今井康一)

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真っ黒なスーツにネクタイを締めた経営陣。押し寄せた記者たちの正面に並ぶと、社長が謝罪の言葉を読み上げ、90度のお辞儀で再びフラッシュを浴びる――。

10月、都内で開かれた出版大手・KADOKAWAの謝罪会見もまた、この定番スタイルだった。同社は、角川歴彦会長(当時)が東京五輪関連の汚職事件をめぐり贈賄の罪で起訴された件について、説明を迫られていた。

2021年にシステム障害が相次いだみずほフィナンシャルグループ(FG)、今夏に大規模通信障害を引き起こしたKDDI──。直近でも何かしらの謝罪会見を目にしたという人は少なくないだろう。

増える危機管理広報の案件

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企業の存続が危ぶまれるようなトラブルが起きた際、その影響を最小限に抑えるPR活動を「危機管理広報」と呼ぶ。単に記者会見やプレスリリースを準備するだけでなく、事件や影響範囲の把握、再発防止策への助言、ステークホルダー別の開示方針の策定など、その要素は多岐にわたる。

そして、あるPR会社の関係者は「不祥事対応など、危機管理広報に関する依頼案件が増えている」と明かす。

背景にあるのが、SNSの発達による情報流通速度の変化だ。例えばみずほFGにおけるシステム障害の際、広報担当者はATMで通帳・カード取り込みが発生していることを午前中に認識し、ホームページで今後の返却方針について告知する準備を進めていた。だが、関係部署との調整に時間を要し、結局は夕方まで掲載できなかった。

かつて三菱自動車で危機管理広報を担当し、現在は独立して広報コンサルタントとして活動する風間武氏は、この数時間が「命取りになる」と指摘する。

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