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PR TIMESが「掲載基準の厳格化」を厭わぬ切実背景 山口拓己社長「開示に正直さが問われる時代」

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「人々の情報処理能力がこれだけ上がっている中で、ウソや取り繕いはすぐバレる」。そう断言する山口社長に、プレスリリースが迎える転換期について聞いた。

山口社長は「よかったこともダメだったことも、全部会社の歴史として社会に開示し、コミュニケーションする機運が高まっているのではないか」と語る(撮影:梅谷秀司)

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企業がテレビ局、新聞社などのメディアに取り上げてほしい情報を提供する手段として、古くから使われてきた「プレスリリース」。これが近年、消費者と直接つながる手段に変貌しつつある。
11月14日発売の『週刊東洋経済』11月19日号では「氾濫するPR」を特集(アマゾンでの購入はこちら)。情報流通の新たな担い手となりつつあるPR会社・業界の分析や、失敗しない定番オウンドツールの活用術、そしてこれらと対照的に不振が極まるマスメディアの現在地などを追っている。
プレスリリース配信プラットフォームとして成長を続けるのがPR TIMESだ。直近の利用社数は7.3万に迫り、3年で倍以上に拡大。配信されるリリースの数は月間3万件に上る。山口拓己社長は事業成長の過程で、社会への情報開示に対する企業姿勢がじわじわと変容してきたことを実感するという。

「嫌われ者」から脱却するために

――プレスリリース自体は古くからある手法ですが、PR TIMESはそれをどのように再定義したのでしょうか。

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事業を立ち上げた当時(2007年)、プレスリリースはまさに”嫌われ者”だった。郵送だった頃は手間もお金もかかっていたが、メールならほぼ無料かつ無限に送れる。その結果、リリースのスパム化が進んでしまった。内容も、受け手のことを考えず自社が宣伝したいポイントだけを詰め込んだものが目立っていた。

一方で、歴史上最初のプレスリリースといわれるもの(1906年・アトランティックシティ鉄道事故の際に会社が出したリリース)を見ると、マイナスイメージを持たれかねない情報まで詳しく公開されている。自分たちではなく、世の中の利益になることをよく考え、労力をかけて作り込まれていた。

この会社の声明は当時、原文のままニューヨークタイムズにも転載されている。価値がある情報だと判断されれば、読者にそのままの言葉で届けられるということだ。SNSなどを介して生活者に情報が直接届くようになった今こそ、基本に立ち返るというか、受け手本意のプレスリリースを配信していくことが重要になる。

――PR TIMESはプラットフォームとして、企業のそういった活動をサポートしていると。

そうだ。芽が出始めたのは2010年あたり。インターネットのデバイスがPCからスマートフォンになり、通信のスピードも上がった。それに伴い、今や当たり前に使われるプラットフォームやSNSのアプリが登場した。これらの発展とPR TIMESのPVの伸びも相関している。

2012年ごろからは画像や動画を多用したり、自由な文章表現で書いたプレスリリースが増えた。そうした変化に合わせ、機能を強化していった。そのころに自分たちの存在価値としてすごく実感したのは、プレスリリースは情報発信の機会をつくった「本人」や「主体」にもっとスポットを当てられる発信手段だということだ。

――具体的にどういうことでしょう?

ベンチャーの資金調達に関するリリースがわかりやすい。昔は取り上げるメディアがほぼなかったこともあり、今ほど当たり前ではなかった。出す動機がなかったわけだ。それが今、どの会社も出すようになったのは、メディアの注目度だけでなく発信者側の変化もあるように思う。

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