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「拡大するほど薄まる個性」ネットメディアの葛藤 浜田敬子氏「今こそライバル同士の連帯が必要」

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一時は「既存メディアと置き換わる存在になりうる」と目された新興ネットメディアだが、現状はそれに遠く及ばない。識者に課題を聞いた。

右肩上がりの成長軌道の雲行きが怪しくなってきた新興ネットメディアの課題とは(写真:Luce/PIXTA)

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11月14日発売の『週刊東洋経済』11月19日号では「氾濫するPR」を特集(アマゾンの購入ページはこちら)。情報流通の新たな担い手となりつつあるPR会社・業界の分析や、失敗しない定番オウンドツールの活用術、そしてこれらと対照的に不振が極まるマスメディアの現在地などを追っている。
2022年7月、デジタル時代の情報発信についてセミナーなどを開催する非営利組織「デジタル・ジャーナリスト育成機構」が設立された。
その代表を務めるのが、朝日新聞社で『週刊朝日』編集部や『AERA』編集長を経験し、2017年にアメリカの経済ネットメディア『Business Insider』の日本版で統括編集長に就任した浜田敬子氏だ。2020年末で同役職を退任した浜田氏に、ネットメディアが直面する課題と今後への提言を聞いた。

「ミレニアルフィルター」を意識した

――紙媒体からBusiness Insiderへ、そしてデジタルジャーナリスト育成へと、ネットメディア領域であらゆる挑戦をされていますね。

紙媒体で一生懸命工夫をして記事を出しても、政治や国際、経済、企業などの硬派なニュースを若い世代に届けることは非常に難しかった。そこにリーチできることが、ネットメディアに行きたかった大きな理由だ。

週刊東洋経済 2022年11/19号[雑誌](氾濫するPR)
『週刊東洋経済 2022年11/19号 氾濫するPR』(東洋経済新報社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。紙版はこちら。電子版はこちら

移籍後は本当にいろいろな試行錯誤をした。例えば、記事に『AERA』時代と同じような感覚で見出しをつけたら、20代の編集部員に「この言葉はまったく意味がわかりません」と言われる。若い人たちになじみのない熟語や故事成語もたくさんあるんだなと。単に内容を易しくするのではなく、“ミレニアルフィルター”を通して伝えることを重視してきた。

(ネットメディアなら)記事のどこで離脱したかデータで確認できるため、「ここがわかりにくかったな」と反省し、修正していけるのもネットメディアのいいところだ。

結果として、読者のおよそ3分の2以上を20~30代が占め、狙った読者を獲得することができた。経済メディアにもかかわらず、多い時は3割近い読者が女性で、ユニセックスな経済メディアも実現できた。

――一方で、新興ネットメディアが右肩上がりで成長している印象はありません。

どこもマネタイズに悩んでいる。

多くの広告クライアントが若い世代へのリーチに悩んでいたため、私たちの「ミレニアル世代の価値観を大事にしよう」という方針に共感し、創刊からほどなくしてナショナルブランドからスポンサード(記事広告)が入るようになった。収益の大きな支えとなり、それが増えることはうれしかった。一方で、スポンサードの制作には非常に手間がかかる。

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