国内最大手のPR会社であるベクトルの西江肇司社長を直撃すると、現代のマーケティングに対する「アンチテーゼ」が成長の原動力だとわかった。
きれいなCMに消費者が反応しない時代
――近年、事業領域が広がり、成長のギアも上がってきました。
2014年にアメリカの業界誌「PRWEEK」が発表したランキングで、当社が日本のPR会社のナンバーワン(PR関連事業の売上高ベース)になり、PR以外の事業に踏み出していくことにした。それが海外では普通のことだと気付いたからだ。
この領域で最も勢いがあるのは中国だと思うが、現地の同業は儲かるなら動画でもなんでも、フットワーク軽く進出する。当社が(2017年に)買収したハワイのPR会社もデジタルマーケからアドテク(広告技術)まですべて手がけている。日本のPR会社はPR業に専念しがちだが、それだと面白くない。
SNSや動画を中心にメディアが大きく変化する中、中国・欧米と日本とでPR会社の役割に違いが生じている。もっと言えば、日本人のいうPRの概念はなくなりつつある。今やグローバルで語られているのは「(メディアとの関係づくりなど)狭義のPR」ではなく、「広義のPR」だ。
――要因は消費者側の変化ですか?
単純な広告に消費者が反応しない時代になり、企業の情報もきれいに作り込んだCMなどでなく、SNSや動画サイトで自然に見てもらえるコンテンツとして流すようになってきた。
一方でTikTokを見るとよくわかるが、とくに短尺動画になると(純粋なユーザー投稿コンテンツなのかスポンサードコンテンツなのかを)受け手があまり意識せずに見ているのが現状だ。
PR会社の仕事の本質は、「企業が広めたい情報」と「消費者が受け取りたい情報」の間を取り持ち、ギャップを埋めることだと思っている。ニュース・コンテンツづくりというところまで新しい企業ニーズが広がっているなら、当然われわれの守備範囲になる。
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