電通が急ぐ「デジタル化」、加速するM&Aの狙い目 「かつての苦い記憶」からは何を学んだのか

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デジタル広告領域では競合に後れを取ってきた電通。だが、足下ではその構図が激変。財務体質も改善してきた今、次に狙うM&Aとは。

日本のネット広告業界で“周回遅れ”だった電通グループは、M&Aで巻き返し、マス広告の代理店というイメージを脱却しようとしている(編集部撮影)

「かつての電通はデジタルで周回遅れの状態で、業界でも取り残されつつあった」。電通グループの子会社幹部はそう振り返る。

近年はゲームアプリやEC(ネット通販)事業者の需要を取り込み、サイバーエージェントなどネット専業勢が成長。長年の競合、博報堂DYホールディングスも、2009年にネット広告運用などを手がけるデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムを子会社化するなど、電通の先手を打っていた。

だが、その構図は今や一変しつつある。

電通が2月14日に発表した2021年12月期決算では、売上高に当たる収益は1兆0855億円(前期比15.6%増)、営業利益は2001年の上場来過去最高となる2418億円(前期は1406億円の赤字)となった。国内外での人員削減による構造改革や事業減損を経て急回復したが、とくに国内のネット広告事業の成長が顕著だった。

かつての「失敗」とどう違う?

この数年で、電通が得意とする大企業クライアントが広告予算のデジタルシフトを一気に進めた。その流れに沿うよう、電通側も組織を強化。2016年に電通のデジタル部門や関連会社を統合した電通デジタルを設立した。

2018年にはネット広告大手セプテーニホールディングスとの資本提携、ネット広告の配信プラットフォームを運営するVOYAGE GROUPの連結化、そして昨年にはセプテーニの連結子会社化を決めるなど、足りないピースを買い集めてきた。「3年が経ち、ようやく人並みに追いついてきた」(前出の幹部)。

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