大都市エリートが民主主義を滅ぼしてしまう理由 「新自由主義」への反省と民主的多元主義の再生
アメリカの国民統合のあり方を考察
『新しい階級闘争:大都市エリートから民主主義を守る』は、Michael Lind, The New Class War: Saving Democracy from the Metropolitan Elite(London: Atlantic Books, 2020)の邦訳である。著者のマイケル・リンド(Michael Lind)氏は1962年アメリカテキサス生まれで、現在、テキサス大学オースティン校リンドン・B・ジョンソン公共政策大学院で政治学を講じる教授である。
氏は、イェール大学で国際関係論の修士、テキサス大学のロー・スクールでJD(法務博士)の学位をそれぞれ取得している。その後、ヘリテージ財団などのシンクタンクでアメリカの政策の分析・提言活動に従事し、1991年からは『ナショナル・インタレスト』などのメジャーな雑誌で編集者や論説委員を務めた。1999年には「ニュー・アメリカ財団」(現在は「ニュー・アメリカ」)というシンクタンクを設立し、2017年からは現職である。この経歴からわかるように、リンド氏は現実政治に対する深い知識と実践的関心を有する政治学者だと言えよう。
マイケル・リンド氏の名前を知ったのは、私が長年関心を持っている「リベラル・ナショナリズム」のアメリカにおける提唱者の一人だからである。氏は、1995年に出版した『次なる米国─新しいナショナリズムと第4次米国革命』(The Next American Nation: The New Nationalism and the Fourth American Revolution (New York: Free Press)などで、多様な人種や利害の相違を超えたアメリカの国民統合のあり方についてさまざまな考察を行ってきた。
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