マサミチさんは飲食店で働く人たちでつくる「飲食店ユニオン」に加入。会社側に➀労働時間を1分単位で計算すること➁手洗いなどの準備作業を労働時間とみなすこと③名札をフルネーム記載から苗字だけに変更すること➃➀➁については過去にさかのぼって未払い分を支払うこと──などを求める要求書を手渡した。
この結果、会社から今後は1分単位での計算に改めるほか、準備の一部を労働時間とみなすという旨の回答があった。ネームプレートも苗字だけに変更された。もちろんすべてのアルバイトたちが対象だ。ただ過去分の支払いについては拒まれたという。
10月下旬、マサミチさんは別の店舗で働くアルバイトと2人で記者会見を開き、会社との話し合いの結果と、引き続き団体交渉を続けていくことを報告した。飲食店ユニオンには回転寿司チェーンの従業員からの相談が多く寄せられていることから、新たに「回転寿司ユニオン」を発足させたことも明らかにした。
高校時代の担任教師との出会い
マサミチさんは実家暮らし。いわゆる中流家庭で、お金のことでとくに苦労をしたことはない。社会問題に強い関心があったわけでもないという。ただユニオンに入ろうと思ったのは、高校時代の担任教師との出会いが大きかったと振り返る。
担任教師からは、当時テレビや新聞で話題になった過重労働や残業代不払いといった問題に対して声を上げて闘っている当事者がいることを教えられたほか、労働法に詳しい弁護士を招いた授業では悪質企業に遭遇したときの対処方法を学んだ。このとき、マサミチさんの心に刻まれたのは「おかしいと思ったことには意見を言っていいんだ」ということ。
そこから先、マサミチさんら一部の生徒たちが自ら挑戦したのは、いわゆるブラック校則の廃止を求めて学校側と話し合うことだった。これにより髪型のツーブロック禁止や、家計に負担の大きい有名ブランド限定の制服指定など、学校側が見直しを決めた規則もあったという。
黙るのでもなく、逃げるのでもなく、声を上げるという道を選んだ理由について、「このときの成功体験が自分の自信になっているのかもしれません」。
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