「県別の最低賃金」はどう見ても矛盾だらけだ 「全国一律の最低賃金」は十分検討に値する
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。
退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、日本に必要なのは「生産性の向上」だとしたうえで、『日本人の勝算』で、いまの「最低賃金の決め方」に疑問を投げかけている。
どこがおかしいのか、そして県別の最低賃金を詳しく分析すると見えてくる「見逃せない矛盾」について解説してもらう。
16年ぶりに縮小した最低賃金の格差
今年、2019年には参議院議員選挙が戦われました。その際には、与党・自民党だけではなく、野党もこぞって「最低賃金の引き上げ」を公約に掲げていました。その効果もあり、最低賃金に多くの人が関心を寄せるようになったと感じます。
先ごろ、来年の都道府県別の最低賃金の数字が固まりました。ご存じのない方がいるといけないので、一応お知らせしておきますと、日本では最低賃金は都道府県ごと別々に設定されます。全国一律でないのは、世界の中では珍しい部類です。
来年の最低賃金の全国平均(加重平均)は901円になりました。一方、最低賃金が最も高い東京都と最も低い鹿児島県の差は、前年に比べ、16年ぶりに1円縮まり、223円になりました。
しかし、本来、東京都と鹿児島県の最低賃金の差は226円まで拡大するはずだったのです。そうはならずに差が縮まったのは、鹿児島県が中央最低賃金審議会の示した引き上げ目安である26円より、3円多く引き上げ、最低賃金を790円としたからです。
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