「県別の最低賃金」はどう見ても矛盾だらけだ

「全国一律の最低賃金」は十分検討に値する

最低賃金は厚生労働省の中央最低賃金審議会が、引き上げ額の目安を答申し、それを受けた各地方の最低賃金審議会が地域ごとの事情を勘案したうえで改めて答申を行い、各都道府県の労働局長が地域別の最低賃金額を決定するという流れで決まります。

今回、鹿児島県と同様に、目安より高い引き上げを決めた県が19県ありました。内訳は目安+1円が7県、+2円が11県、+3円が1県でしたが、面白いのは、これらの県の最低賃金がすべて790円と足並みのそろった金額に落ち着いたことです。

偶然にしてはできすぎのように思えますが、これまでになく最低賃金に注目が集まってもいたので、どの県もビリになりたくなかったのかもしれません。もしかしたら、政治的な働きかけがあったのかもしれません。

地方の最低賃金が低いと「一極集中」が止まらない

あまり経済が芳しくない地方の中小企業は、自分の県の最低賃金を全国平均に近づけるのは、大変だと感じるかもしれません。しかし、だからと言って差が開いたままにするのは、将来的に決して自分たちのためにはならないことを理解するべきだと思います。

実際のデータを使って分析をすると、東京都と最低賃金の差が開けば開くほど、その自治体からより多くの人材が流出してしまう傾向が確認できます。そしてその流れは、最低賃金の差が縮まらない限り、止まらないと考えられるのです。

どうしてそうなるのかは、少し考えていただければ明白です。

先ほど説明した通り、各都道府県の最低賃金を答申する前に、中央最低賃金審議会が、その地域の物価や生活水準、そして、その県の企業の支払い能力を考慮し、検討します。この際、最も重要な要素は最後の「企業の支払い能力」です。

東京都との最低賃金の差が大きくなればなるほど、若い人にとってはその県を出るインセンティブが大きくなります。若い人が減れば需要が減少し、企業の支払い能力は低下します。そうすると、今度は賃金をさらに抑えなくてはいけなくなり、さらに人が流出してしまい、さらに需要が減少……と、どんどんと袋小路にはまっていくことになるのです。一言で言うと、安い最低賃金は経済的な悪循環を生み出すのです。

この悪循環が起きている事実は、各県の人口動態のデータ分析で確認できます。安い最低賃金の引き起こす悪影響は現実のもので、机上の空論では決してないことを理解するべきです。

東京と最低賃金の差をなくすには、理論上、地方でも東京都と同レベルの生産性を確保しなくてはいけません。地方企業は生産性向上に相当の努力が必要ですので、楽だと思っている人は皆無でしょう。

目先の利益のみを考えれば、地方の最低賃金の水準をだんだんと全国平均に近づけることに反対するのは、理にかなっているように思うかもしれません。しかし、視野を広げて考えるとそうではないことがわかります。最低賃金の差を縮めても、よくなる保証はないかもしれませんが、確実に衰退していく今の路線よりは希望が持てます。当然、生産性性向上促進策を同時に実行することが不可欠です。

次ページ生産性向上と最低賃金引き上げ、どちらが先にあるべきか
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