逆境の「ポーラ」が挑む、愚直な"らしさ追求"の中身 業績低迷の中、初の女性社長がしていること

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「企業理念は『美と健康を願う人々および社会の永続的幸福を実現する』とうたっているので、“幸せ”について考えるのは大事と思ったのです」(及川さん)

ある調査結果を見ていて、「スキンケアの時間は、自分をリセットする豊かな時間」というお客様がポーラには多いことがわかり、「私たちの作りたい“幸せ”の糸口になるかもしれない。一人ひとりの仕事と企業理念とを、幸せという概念で結びつけられるのでは」と考えた。

そして幸福学の専門家である前野隆司・慶應義塾大学教授の協力を得て、「幸せ研究所」を立ち上げたという。前野教授の理論にある「やってみよう」「なんとかなる」「ありがとう」「ありのままに」という4つの幸せに影響する因子のもと、20人ほどの社員がかかわっている。

どんな研究をしているのか。例えば、チームリーダーは幸せだけれど、メンバーは幸せではない。またその逆もあるが、それはどうしてなのかなど、「個と集団の幸せの作り方の違いが見えてきて、モチベーションやマネジメントのあり方に及んでいるのです」(及川さん)。

抽象的な研究に陥ることなく、具体的な策につながっていく。それを無理がないかたちでやっていくという。

顧客との向き合い方についても、“幸せ”は外せない重要なテーマだ。商品を説明して買ってもらうにとどまらず、家で使っている時間や、使ってからの時間を豊かに過ごしてもらえるかを視野に入れ、研究を積み重ねているという。

現状に疑問を抱くことの重要性

「社員の中でクエスチョンが増えているのもよい傾向です。社長になったときは、部門間の壁とか、前例がないとか、予算が足りないとか、成功確率の低いことにトライするのは怖いという意識が強かったと思います。それが、自分の言葉で『ウィル』を発信するようになってきました」(及川さん)

現状に疑問を抱き、「こうしたい」という意思をもって行動するのが目につくという。

「コロナ禍で3年近く、苦しんでいるので、みんなじたばたして、何とかしないといけないということで、主体は、経営者でもビジネスパートナーでもなく、自分たちなのだという意識がついてきた。愚直に、企業理念と独自価値とそれを具現化する手段を考えてきたことが、少しずつ実を結んでいる気がします」

ポーラの及川社長
「社員が自分の言葉で『ウィル』を発信するようになってきた」と語る及川社長(写真:今井康一)
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