逆境の「ポーラ」が挑む、愚直な"らしさ追求"の中身 業績低迷の中、初の女性社長がしていること

✎ 1〜 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 7 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

1937年には、訪問形式で化粧品を販売するセールスレディ=「ポーラレディ」を世に送り出した。仕事は男性、家事は女性という概念が強い中、これは先駆的なことでもあった。「ポーラレディ」による販売網を広げ、成長を遂げていったのだ。

その後、人々のライフスタイルの変化に応じ、訪問販売という手法を見直し、「ポーラ ザ ビューティー」をはじめとするショップ展開へ切り替えていった。「ポーラレディ」は「ビューティーディレクター」という呼称になり、自宅を訪問する形式ではなく、店舗でカウンセリングやエステを行い、化粧品を販売するようになった。

今は全国で約3200の店舗を展開し、約3万3000人の「ビューティーディレクター」が働いている。百貨店でも「POLA」として売り場を展開し、「B.A」や「リンクルショット」をはじめとする化粧品を販売している。 

「Science. Art. Love.」が意味するもの

「ポーラらしさは、企業バリューとして掲げている『Science. Art. Love.』です」(及川さん)

及川さんへの取材は冒頭から「らしさ」の話になった。シンプルな3つの文言だが、どれも深い概念を包括している。具体的には、どんな意味を表しているのか。

まず「Science.」には、科学というとらえ方ではなく、好奇心をもって探求し挑戦する意図が込められている。「Art.」は、美術的なことに限定せず、自分の中にある何かを表現していくこと、人が作り出すクリエイティブなエネルギーを包括的に表しているという。

そして「Love.」は、「Science.」的な探求心と、「Art.」的なクリエイティビティをつなぐものであり、人の可能性を信じる愛が、その根底を支えている。創業時の「人に向けた愛情」という価値観がここで継承されている。「ポーラは、さまざまな視点から人間の可能性を拓いていく、そういうエネルギーを持った会社ととらえているのです」と及川さんは言う。

数ある化粧品メーカーの中でも、ポーラは「科学的な領域に強い」「研究開発に力を入れている」というイメージが強い。箱根に「ポーラ美術館」を、銀座にアネックスとしてギャラリーを構えていることもあり、アートに近い企業という印象もある。

一方、クールなかっこよさが先立っていて、及川さんが口にしたような温かい人間性や、生き生きとした好奇心が、もっと伝わってきたらいいと感じてもいた。

ポーラ本社の外観
ポーラは美術館の運営などアートにも力を入れている(写真:今井康一)
次ページポーラは不器用で「伝えるのが下手」
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事