旧統一教会「マインドコントロール」救済案の危険 オウム真理教の裁判で否定されたものが登場
これを旧統一教会の実態に合わせたらどうだろうか。オウム真理教が誕生した1980年代は、バブル経済の勢いを借りたように、新興宗教が相次いで立ち上がる宗教ブームだった。1964年に宗教法人となっていた旧統一教会もこの時代から、いわゆる霊感商法が社会問題化している。
そして、この時代に誕生した新興宗教の特徴は、現世利益追求型にある。死後、極楽や天国に行けるように功徳を積むというより、むしろ自己開発セミナーに近く、現世の幸福を得るためにどうしたらよいのか、その追求に勤しみ、そこに大量消費社会の浸透が加わって、その対価を支払うことによって、効能を得ようとする。
オウム真理教の場合だと、厳しい修行を積むことによって解脱、悟りを得られる、教祖のように空中浮揚もできる超能力を得られるとした。旧統一教会は、印鑑や壺などを購入することで不幸を払拭できるとした。それがトラブルになったのは、高額の対価を支払ったのに、その見返りがないことに気づくからだ。そうして高額の返金訴訟になったケースは、旧統一教会以外の新興宗教にも見られる1つの現象だった。
しかも旧統一教会は、最初から統一教会であることを名乗らず、言葉巧みに相手を購入へと誘導する。ところが、その買わせ方も直後におかしいと気づく人たちが続出して、社会問題化していった。いってみれば、詐欺的手法が露見して問題となった。
他の宗教の信者にも同じ言い方が可能になる
一方で教団にのめり込んでいく信者もいたことが、問題を複雑化させた。その典型が安倍晋三元首相を襲撃した山上徹也容疑者の母親だ。
山上容疑者によると母親は旧統一教会にのめり込み、多額の献金をして家庭が崩壊したという。だが、本人は多額の献金をしても納得して幸せでいられる。だから、いまでも信者でいるはずだ。これを家族とはいえ、周囲の第三者がマインドコントロールと指摘することができるだろうか。
仮に、山上容疑者の母親もマインドコントロール下にあって、被害者であるとするのなら、他の宗教にはまっている信者にも、同じ言い方が可能になる。
「死後に天国や地獄があるなんて証明できない、それを信じるのはマインドコントロールされているからだ」ともいえるし、教祖を仏陀やキリストの生まれかわりと崇拝することもマインドコントロールされているからだ、ということもできてしまう。
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