100年前の「東大医学部入試」は驚く程簡単だった 「本当にこれが解答でいいのか?」と心配になる

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ここからどのように曲線の方程式を導くかがカギとなりますが、拙著では、原点を同じにした平面極座標を導入しました。ぜひトライしてみてください。

そして最後は、拙著のなかでもっとも難しいランクの5つ★がついた医学部入試数学の問題です。

(出典:『100年前の東大入試数学 ディープすぎる難問・奇問100』)

三角関数関連の難問で、現代の大学入試で定番ネタでもある n 倍角の公式の導出です。de Moivre の定理や加法定理を用いることで、倍角公式を計算できます。とはいえ、ここまで受験生に丸投げする問題は現代の大学入試ではなかなかお目にかかれず、当時ならではの出題といえます。

本問に取り組むことで、2倍角・3倍角のみならず、倍角公式を統一的に眺めることができますので、そこにも面白さが感じられるのではないでしょうか。

100年前の入試には体格検査があった!

今回は、およそ100年前の東大入試数学のなかでも、現代では難関学部とされる医学部の問題について紹介しましたが、いかがでしたでしょうか? 

中学生でも解けるレベルから超難問まで、問題のレベルは実に幅広くありました。現代の東大医学部入試からすると、予想外のラインナップでしたね。

ちなみに、現代と100年前で異なるのは、入試問題の内容だけではありません。試験科目そのものにも、現代とは大きく異なる点がありました。

100年前の東大入試数学 ディープすぎる難問・奇問100
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たとえば現代の場合、東大・理系(理科一類・理科二類・理科三類)の受験では「外国語(英語など)・数学・国語・理科(物理・化学・生物・地学から2科目)」の試験が2次試験で課されます。

一方、100年前の東大の医学部入試では、化學・數學・生物學・物理學・和文歐譯・歐文和譯に加え、なんと「體格(体格)検査」もあり、健康体でないと不合格になったようです。

体格検査はほかに、理学部や工学部などでも存在したようです。

医師は大変な仕事でしょうし、健康で体力のある受験生を求めるのはある意味自然なことかもしれませんが、驚きですね。現代の大学入試の募集要項には、このようなことはなかなか書けないと思います。

今回は100年前の医学部入試をご紹介しましたが、当時の東京帝國大學では他学部でもさまざまな難易度の問題や面白い問題が出題されています。
ぜひ当時の受験生になったつもりでチャレンジしてみてください。

林 俊介 スタグリット代表取締役

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はやし・しゅんすけ / Shunsuke Hayashi

1996年生まれ。2019年、東京大学理学部物理学科卒。2016年1月に塾講師・家庭教師のアルバイトを始めたことをきっかけに、教育関連の仕事に従事。自身で書籍・電子書籍の出版経験があるほか、小学生向けの科学実験教室の監修(東京都港区行政案件)、低学力層の中学生向けのフォローアップ授業(東京都台東区行政案件)など活動は多岐にわたる。2014年、日本物理オリンピック金賞。情報経営イノベーション専門職大学 客員教員。

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