サントリー「一線を超えたビール」が意味すること 「ビアボール」は既存のビールの概念を変えるか
インベブがビヨンドビールという概念を発表した背景には、世界のビール市場における寡占化があります。ビールは世界で最も飲まれているお酒ですが、日本のみならず、世界各国幾つかの大手企業によって市場は寡占され、そうした企業の主力商品であるライトなラガーがシェアの大半を占めています。
コモディティであるこのカテゴリーでは、長年大手同士激しい競争を繰り広げる一方で、各社ブルーオーシャンを模索してきました。2010年代は高級路線のクラフトビールメーカーを買収するなどしてきましたが、現在次の一手として注目が集まっているのが、ビヨンドビールというわけです。
モルソン・クアーズをはじめ、他の大手も黙ってはいません。大手各社ビヨンドビールへの展開をここ数年強めていて、巨大なビールメーカーというよりも総合酒類メーカーとしての色を強めています。
酒税法上は「ビール」
こうした流れが日本にも訪れるのではないか、と睨んでいたところ、登場したのがサントリーのビアボールでした。
ビアボールは酒税法上のビールであることは間違いありませんが、実際には東京の下町を中心に親しまれている「焼酎×ホッピー」の要素を再構成したものだと考えられます。ホッピーが焼酎を発泡性麦芽飲料で割るのに対して、ビアボールは高アルコールビールを炭酸水で割るという具合です。
そう考えると、ビアボール単体はビールでありながら、飲み物としてはサワーを含むチューハイのカテゴリーに位置づけるのが妥当でしょう。サントリーが持つ既存のビール醸造技術を駆使してゼロベースではない開発をし、ビールがチューハイという隣接領域へと進出していくという意味でこの商品はビヨンドビールの性格を持つと言えます。
現在消費者の嗜好が多様化する中、店先にはビールのみならずワイン、日本酒、ウイスキーなど多種多様な商品が並んでいます。20代の若者に限って見れば、アンケート調査ではビールよりもチューハイが人気。チューハイはアルコール度数5%を中心に上はストロング系、下はほぼジュースのようなライトなものまでさまざまあり、その幅広さも魅力の1つです。
ビアボールはこの性質も備えていて、好みに応じて飲み手が濃さを調整できます。開発コンセプトムービーで語られているように、濃さを調整するだけでなく、レモンを加えるなどアレンジも可能。強いものが好みならばロックで楽しめるし、ソーダ以外の炭酸水飲料を使用すればさらにバラエティが豊かになります。
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