80代の「現代詩人」の詩が若者世代に響く意味 吉増剛造さんの作品に影響を受けた若き音楽家

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そのままでは歌詞としてハマらない時は“歌詞の加工”をします。そうすると、1曲のなかで2つ詩が連なるような状態が生まれます。

それはそれでいいのかもしれませんが、最初に浮かんだ「文字だけの表現」というのは、ずっと憧れがあります。詩も小説もいつかは挑戦してみたいジャンルですね。

君島大空/1995年生まれ 日本の音楽家。2014年から活動を始める。同年からSoundCloudに自身で作詞/作曲/編曲/演奏/歌唱をし多重録音で制作した音源の公開を始める。2019年 3月13日 1st Ep 『午後の反射光』を発表。ギタリストとして 吉澤嘉代子、高井息吹、adieu(上白石萌歌)などのアーティストのライブや録音に参加する一方、楽曲提供など様々な分野で活動中。

――過去のインタビューでは「“音楽による可視化”に努めている」とコメントしています。

それは僕のテーマです。視覚情報ではない部分からイメージが生まれてくるというか、映像が喚起されます。映像喚起力が高い曲が僕は好きなのですが、それは、目からの情報からだけで生まれるのではなく、触感も含めた「感覚」から生まれることもあると思います。

そういう意味では、自分の中に内在する映像に向けて音楽を作っています。そして、言葉へフォーカスするのは言葉と映像の「ずれ」を出すためのものなんですね。それが出ると、音楽がとても肉体的になると感じています。「耳から入ってくる映像」みたいなものを作ることが理想です。

ミュージックビデオ(MV)も、曲を作っている時に完成形は想定しませんが、自分の中に見えているものはあるので、そのイメージをMVの作り手と共有して、映像にできるものを映像にしています。

若い世代は古典に触れることを忘れがち

――吉増さんは吉本隆明の作品をそのまま書き写したり、親鸞のお経を写経しています。君島さんにとって「古典」に触れる意味はどのようなものなのでしょうか。

僕たちの世代は古典に触れることは忘れがちな世代だと思います。古典から学ばずとも表現をできてしまう世代というか。

YouTubeが物心ついたところからあって、その中から自分が気に入ったものを探して、それだけから吸収して物を作るようなところもあると思うんです。

でも、僕自身は、古典を強く意識しています。家の基礎みたいなもので、そこがないまま作品を作るのは怖い。世代的にその基礎がとても薄いという自覚もあります。なので、意識的に向き合おうとしています。

今の流れも昔の流れもずっと定点観測して自分の視線の高さから見ることが大切だし、何が新しくて何が古いのかというジャッジをずっとしていないと心が腐っていってしまうような気がしていて。なので、クラシカルなものも最先端だと思うものも毎日探して聞いています。

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