「部下が育たない上司」は人間の多様性を知らない 「リーダーシップとはこうだ」と決めつけてないか

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採用方法の改善やオフィス施設の改善、社内での多言語対応など、多様な人材を受け入れるためにすべきことはさまざまであるが、最も重要なのは多様性をマネージする管理職のマネジメント能力の強化である。

多様な人材をマネージするには、管理職は多様なマネジメントスタイルを駆使する必要がある。

ところがなかなかそうはいかない。

私はその理由の1つとして、管理職の多くが「リーダーシップの型」にこだわりすぎているのではないかと考えている。

リーダーシップの流行の変遷

リーダーシップにも流行のようなものがある。

リーダーシップ理論の変遷を見てみると、1980年代には「変革型リーダーシップ」が求められた。ビジョンを示して人を動機づけるマネジメントスタイルである。

2008年にはロバート・K・グリンリーフの著作「サーバント・リーダーシップ」が日本でも発売され多くのビジネスマンの共感を得た。サーバント・リーダーシップは変革型リーダーシップのような組織の先頭に立ってリードするスタイルとは異なり、従業員の目標達成を背後から支援するスタイルである。

2019年には「オーセンティック・リーダーシップ」が注目を集めた。オーセンティックとは「本物の」「真正の」「確実な」などを意味する。簡単に言えば、自分らしさを出し、メンバーに対して弱みも含めて偽りなく自分をさらけ出すスタイルである。

時代に合ったリーダーシップスタイルの発揮に真面目に取り組んできた人々は、1980年代は強いリーダーを演じ、その後2000年に入ると献身的なリーダーに代わり、そして今日では自分の素を出すリーダーになったのである。

このような自己適応の努力は認めるが、管理職側が自らのリーダーシップスタイルを(良かれと思って)決め、一方的にそれを提供するやり方になってしまっている点にやや問題がある。

いかに時代の変化に合わせて提唱されているリーダーシップを発揮してみたところで、組織内部の価値観の多様性はそれ以上に強化されているのである。

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