ここに、組織メンバーが多様になっている中で、それをマネージする管理職の部下管理のやり方、リーダーシップの示し方が柔軟性に欠けている、という矛盾が見て取れる。
多様性が進展した組織では、ワンパターンのリーダーシップスタイルでは多様性をマネージしきれないのである。
リーダーシップの示し方だけではなく、例えばコーチングのやり方でも同様のことがいえる。
コーチングの基本として「こちらから指示せずに、部下に対して質問を繰り返すことによって部下が自ら答えを出すように導く」ということがよくいわれる。
このやり方を忠実すぎるほどに守りながら部下との対話を進めるがゆえに、なかなか思うような対話にならず、コーチングをするほうもされるほうもイライラしたりすることがある。これも対応の柔軟性に欠ける例であろう。
多様な価値観
異文化マネジメントの分野で有名なオランダの社会心理学者ヘールト・ホフステードは、「上下関係の強さ」、「個人主義傾向の強さ」、「不確実性の回避傾向の強さ」など6つの領域において国ごとに強弱の差がある事を発見した。
日本で部下からの評価が高い管理職というのは、往々にして、部下の周囲で生じていることをすべて把握していて、部下からの質問には的確な答えを示すことができ、部下が困っている時には手とり足取り指導するタイプである。
例えばこれをアメリカ人の部下に対して実行すると、能力のない上司とも捉えられかねない。
一般的にアメリカ人にとって優秀な上司というのは、部下に仕事の方向性を示し、実行は部下に任せ、部下が困っている時には答えを教えるのではなく解決にむすびつくような示唆を与えたり、環境整備をする人である。
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