和田秀樹「高齢者はお金に過度な心配が不要な訳」 人生に潤いを与えるようにお金を使っていく

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蓄えが少なく、お金の目減りにストレスを感じるのでしたら、アルバイトを検討してはいかがでしょうか。高齢者の働き手を求めている企業は多くあります。なるべくストレスがかからない仕事を探してチャレンジしてみましょう。

働けばお金が入ってくるのでお金の不安が減ります。また、人の役に立っている、あるいは社会の役に立っていると思えれば、人生のQOLも上がります。「65歳を過ぎてもアルバイトをしなくてはいけないのか」「70歳を過ぎても働かなくてはならないのか」と思う必要はありません。多少の仕事の不満は人生のスパイスと考えて、前向きに働くのがよいのではないでしょうか。

そうして稼いだお金のうち、好きなことに費やせる額や割合を決めればいい。年金で生活費がまかなえるのであれば全額だって誰にも文句を言われません。やりたいことのために自由に使いましょう。人生に潤いを与えるようにお金を使っていくのです。

例えば、好きなアーティストのコンサートに行ったり、お気に入りの車でドライブをしたり、あるいは楽器を弾きたいなら、その楽器を買って練習しましょう。気ままな旅に出たいなら、ぜひそうしましょう。アルバイトなら、休みもとりやすいはずです。

少しわがままに生きるために思い切って使う

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やりたいことを毎日一つずつするというのもいいと思います。お金があまりなくても、1杯のラーメンや1つのケーキ、1杯のコーヒーに払うお金ならあるという人は多いのではないでしょうか。

例えば、おいしいと評判の店にいろいろと行ってみるのです。行列ができていたとしても、時間の余裕はあるのですから、ゆったりとした気持ちで並んでいられます。待っている間に、本や雑誌を読んだり、スマートフォンでネットサーフィンをしたり、友人にていねいなメールを書いたりするのもいいかもしれません。

ストレスがたまるほどお金をセーブしても、それで得られるリターンはどれくらいあるのでしょうか。残された人生で得られるものはそう多くないと思います。それなら、少しわがままに生きるために思い切って使ったほうが、自分の人生が充実します。

和田 秀樹 精神科医

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わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

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