和田秀樹「みんなでボケれば何も怖いことはない」 認知症を恐れすぎず、飼い慣らしながら老いる
認知症は老化現象のひとつで病気ではない
「認知症にだけはなりたくない」と考えている人は多いと思います。
「歳を取るのも身体が弱ってくるのも仕方ない。でも認知症になって何もできなくなるのだけは厭だ」
「家族にも迷惑をかけるし誰からも相手にされなくなる。晩年が認知症じゃ、幸せな人生とは思えない」
そういう不安に捕まってしまうと、ますます高齢になっていくことへの心細さが膨らんでくるでしょう。そこでまず、持たなくていい不安に振り回されないためにも、認知症についての正しい知識をいまのうちにしっかりと身につけておきましょう。ポイントはふたつです。
②老化だからゆっくり進み、個人差も大きい
認知症を恐れる人は徘徊したり妄想がひどくなって暴れるような高齢者を想像してしまいます。あるいは何もわからなくなって身のまわりのこともできないような状態です。「ああいうふうになったらおしまいだな」と思えば、どんなによぼよぼになっても認知症にだけはなりたくないと考えてしまいます。
でも認知症は病気ではないとするのが私の考え方です。症状は現れるけど、あくまで老化現象のひとつであって、高齢になれば筋肉が落ちて足腰が弱るとか、視力や聴力が衰えるのと同じです。病気なら薬で改善したり進行を止めることもできますが、老化現象となれば薬では治せません。
徘徊や妄想は認知症の周辺症状と呼ばれます。認知症になれば全員に徘徊や妄想が現れるのでなく、まったく現れない人もいれば現れてもすぐに収まる人もいます。置かれている環境や周囲の接し方、あるいは本人の受け止め方によっても違ってくるのです。
そのかわり老化現象ですから、高齢になればほとんどの人が認知症になります。ざっくばらんに言ってしまうと、テストをすると、80代後半でおよそ4割、90歳を超えると6割の人は認知症と診断されてしまいます。
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