和田秀樹「みんなでボケれば何も怖いことはない」 認知症を恐れすぎず、飼い慣らしながら老いる

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

道がわからなくなってもスマホのナビがあります。待ち合わせの約束を忘れても相手が電話をかけてきます。壁やカレンダーに予定を書き込んでおけばたいていのことは思い出します。買い物に出るときにリストを作るのは誰でもやっていることです。初期の認知症で困ることは何もないし、ふつうの人と同じように生活できるのです。

そして認知症はゆっくり進行していきます。いつ発症したか周囲の人にも気がつかないくらいゆっくり始まり、「ほんとに認知症なの?」と疑う人がいるくらいしっかりした論理性や思考力を保ちながらも本人だけは「やっぱり以前とは違うな」と気がつきます。その程度です。

つまり認知症とはっきりわかっても慌てることはないし、悲観することもありません。むしろ老いれば誰にでも訪れる症状のひとつにすぎないのですから、老いを受け入れるつもりで認知症も受け入れてしまっていいと思います。悠然と構えて、ボケを飼い慣らしながら老いを楽しんでみる。嫌なことや都合の悪いことはとぼけてしまう。そういう割り切った暮らし方を心がけてください。

覚えておきたいMCI(軽度認知障害)の知識

認知症は病気ではなく、老化によって誰にでも現れる連続性を伴った症状のひとつだということはまずはっきりと認識しておきましょう。連続性を伴うということは、ある日を境に認知症になるということではなく、長いグレーゾーンがあってゆっくりと症状が進み、医者の検査を受けて認知症と診断されます。

じつはその段階でも、まだ軽度の認知症もあれば中程度まで症状が進行している場合もあるのです。

そしてグレーゾーン、まだ認知症ではないけれど、そのまま症状が進めば認知症と診断される状態がMCIです。

どういう状態かと言えば、「固有名詞が出てこない」「同じ質問を何度も口にする」「部屋の鍵やメガネをどこに置いたのか思い出せない」「いま何をやろうとしていたのか忘れてしまう」……などなどです。

たぶんここで、「それならいまの私がそうだ」という人がいると思います。「ほら、あれだよ、アレ」「スマホはどこに置いたっけ」「さっきも聞いたでしょ」……思い当たるやり取りばかりではないでしょうか。

MCIのレベルでしたら、日常生活にとくに困ることはありません。ただ、脳の機能低下が若いころより進んでいることは確かです。でも脳の機能低下を防ぐ生き方や暮らし方があります。MCIの段階でしたら機能低下を抑えることは可能なのです。

次ページ「なったらそのときのこと」と開き直る
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事