和田秀樹「みんなでボケれば何も怖いことはない」 認知症を恐れすぎず、飼い慣らしながら老いる

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つまり認知症というのは、初期のころならそれがただのもの忘れなのか記憶障害の症状なのか、本人も周囲も判別できない程度の軽い症状にすぎず、しかもそういう状態が長く続きながらゆっくりと進行していくものだと受け止めてください。恐れたり慌てることはありません。

むしろ「認知症だったらどうしよう」と不安になって、思い出せないことや忘れてしまうことだけを気にしていると、前頭葉の老化が加速されたり不安に包まれて感情の老化も進んでしまいます。

最悪、気持ちが落ち込んでうつ状態になりかねません。高齢になると認知症よりうつ病のほうが怖いのです。

ボケを飼い慣らしながら老いていこう

「やはりおかしい」と自分でも不安になったり、家族にも勧められて医者に診てもらい、はっきり認知症と診断されたとしても落ち込まなくて大丈夫です。

「私もとうとう」とショックを受けるかもしれませんが、認知症で寝込んだり体調が悪くなることはありません。急にできないことが増えるわけでもないし、相手の話を理解できなくなるわけでもないのです。

初期のうちはせいぜい、直近のことを忘れるという程度です。何年も前のことは覚えていても、ちょっと前のことを思い出せなくなります。細部を思い出せないのでなく、全体の記憶がスポッと抜けてしまいます。よく例に出されるのが昨日の夕食です。

「昨日の夕食には何を食べたか」と聞かれて思い出せないことは誰にでもあります。「何食べたっけ?」と必死で考えて「ああ、昨夜は自宅で久しぶりに妻の手作りの餃子を食べたんだ」と納得します。

ところが認知症がある程度進んだ後のもの忘れでは夕食を食べたことを忘れています。全体の記憶がなくなっているのです。「オレ、昨日晩ご飯食べたっけ?」となります。「何言ってんの、私が餃子を手作りしたでしょ」と妻は機嫌悪くなりますが、「そうだった、美味しかったなあ」と思い出せなくても頷いていればいいのです。

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