企業主導でも「ネットウケ」意識が見られる
ここまで見てきたように、かっぱ寿司は、くら寿司やスシロー、はま寿司といった競合他社に比べて、ネットカルチャーとの親和性が比較的高かった。挙げた事例はいずれも、消費者の想像力によって育まれたものだったが、企業主導でも、ここ数年「ネットウケ」のよさそうな企画を打ち出している。
業界初とされる食べ放題(食べホー)は開始当初、SNS上に「待ち時間が半日」などという叫び声がこだました。コロナ禍を迎えてからは、テイクアウト商品とレンタル回転レーンを組み合わせて、自宅で「回転寿司気分」を楽しめるようなプランを設けた。いずれも非日常の体験価値を提供できるうえ、インスタグラムやYouTubeなど、写真や動画での「映え」とも相性がいい。
しかし、その追い風を業績に反映できず、業界4位を抜け出せていないのも事実だ。
だからこそ、現状を打破するために、カッパ社自身もSNS世代への訴求に、活路を見いだしていたのかもしれない。この夏、新CMキャラクターに指原莉乃さん(29)を起用した際には、
「指原さんは、様々なテレビ番組やSNSで的確に自分の言葉で語られており、その言葉は多くの共感を得ていると思います」(プレスリリースより)
と、アイドルや芸能人というよりも、むしろインフルエンサーとしての一面を、理由として挙げていた。
ことインターネットにおいて、かっぱ寿司は「自分の言葉」ではなく、「顧客の言葉」でブランドイメージを高めてきたように思える。消費者が中心となった都市伝説の波及や、CMの2次創作は、悪意を持って見れば「おもちゃ」にされているが、それだけ親しみを持たれているのだと、ポジティブにもとらえられる。逮捕報道があってから、真っ先に「地下のかっぱ」や「パフェいわし」を思いだし、多くの人がツイートしたのは、その証拠だ。
約500〜600店舗を展開する上位3社と比較して、かっぱ寿司の店舗数は約300店舗と少ないが、裏を返せば、全国に散らばる「潜在顧客」が多い、とも言える。イメージ再生のために、積極的にネットユーザーを巻き込み、実際の消費活動につなげることができれば、尻子玉を抜かれる危険性は減るのではないか。ネットに親しむひとりとして、筆者はそのように考えている。
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