BTSの道程、表現者としての「試練」「ある覚悟」 年上メンバーがデビュー時から続けてきたこと

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
拡大
縮小

BTSのもっとも年上メンバーであるJINは、人生の階段を大切にしながらも、執着を持たずに生きることを努めて意識している人です。動画を観ていると、よく「嫌なことはすぐに忘れるようにする」「良いことも悪いことも軽く考える」というようなことを言っています。彼は何も考えていないようで、考えないことをあえて選ぶという強さを持ち合わせている。もちろん悩むこともあるけれど、その姿は「BTSのJIN」としてはファンに見せなくていい、とも話している。デビュー当時はたびたび涙を見せていた彼が、弱さを見せずに明るさばかりを振りまくようになったのはその覚悟のあらわれです。

『愛しなさい、一度も傷ついたことがないかのように』 (書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

JINのこのような姿勢が、詩の中にある「どの地にも故郷に抱くような執着をもってはならない」という言葉にリンクします。執着を身にまとわないことが、私たちの人生における「呼び声」を聞き分けるために必要なのだということを、彼は知っているのでしょう。

BTSというチームは表現者の集まりで、メンバーそれぞれが別の表現を持っていることが魅力です。しかし、チームに表現者しかいないと行き詰まります。JINはBTSのボーカルとしてれっきとした表現者ではあるものの、同時に、生活者の視線のようなものを持っている。彼はその繊細で冷静な目線で、物事をあるがままに受け取ってきました。

チームが表現者だけだと、その表現が聞く人の生活や感情に根づきにくい。JINの生活者の目線があるからこそ、チームとしてのメッセージに説得力が出るし、表現に広がりや深みが増す。ここにBTSの大きな魅力があります。また、「そんなに深刻にならなくてもいい」という考え方を持った人が、しかも、温かい愛情を秘めたユーモアあふれる人が、年長者を敬う韓国社会において「チームの長男」だったことは、大きなプラスだろうと思います。

SUGA――「苦悩」をエネルギーに変換

人生を1つの模様として見てみなさい
幸せと苦しみは
ほかのこまごました事件とまざりあい
精巧な模様を織りなして
試練もその模様をつくり上げる色になる
だから最後の瞬間が近づいてきたとき私たちは
その模様の完成を喜ぶのだ
――映画『キルトに綴る愛』より
次ページアンビバレントな世界に生きる私たち
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT