RMは、BTSに加入する前からラッパーとして活動していましたが、ヒップホップは、その音楽が好きな人はもちろん、言葉をどうとらえるかということを煮詰めて考える人たちが生業(なりわい)とするジャンルだと思います。彼は特に言葉で表現する人なので、その伝える手段としてヒップホップを選んだのは理解できます。
ただ、今後はその表現方法が必ずしも音楽だけであるとはかぎらないと彼は発言しています。最近は以前から興味のあった現代アートに傾倒し、美術館に足を運んではその様子をインスタグラムなどにアップして、世界中のアート界隈をざわつかせています。
この詩「沈黙の音」は、「存在の言語で会いましょう。衝突と感覚と直感で」という一節から始まりますが、まさに今後RMが向かう世界観ではないかと思いました。彼が今後、歌詞以外に、詩や小説を書くようになったとしても、または抽象画を描くようになったとしても不思議ではありません。
言葉とアートの世界は、つながっています。言葉は意味作用を持つ部分が注目されがちですが、一方で遊戯作用もあり、それを担っているのが「詩」なのです。詩というのは、自明とされる言葉の意味を宙吊りにして、言葉の戯れだけを楽しむことができるジャンルです。つまり、言葉を通して抽象を扱うことができるのです。彼らの音楽の原点であるヒップホップは韻を踏むことが特徴ですが、やはりその中には、言葉を物質的に扱うだけで、意味がない戯れの場合があります。BTSの歌詞の中にもたびたび言葉遊びが出てきますよね。
こういう言語の物質的作用とアートの抽象性は完全に連動しており、RMは言葉とアートをある面ではつなげて考えているのだろうと思います。彼が言葉を紡ぐとき、今後はますます「存在の言語」を目指した表現を追求していくことになるでしょう。
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