BTSの道程、表現者としての「試練」「ある覚悟」 年上メンバーがデビュー時から続けてきたこと

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

この詩はSUGAそのものという感じがします。彼は、私の中では「幸せ」と「苦しみ」のアンビバレンスの象徴のような存在であり、それがBTSというチームが放つメッセージの中心にあると思います。

彼自身、そのアンビバレンスについて語り続けてきましたが、それをネガティブにとらえる向きがあることはいささか残念です。実際に、今年の「防弾会食」では、「この仕事をしながら、楽しかった瞬間のほうがずっと多いけれど、本当につらかった瞬間もすごく多い」という発言が誤解されました。幸せや喜びだけを手にすることなんてできないし、それではむしろつまらないと、彼は思っているのですが。

変にポジティブすぎるメッセージは、リアリティがありません。子どもを持つ親の中には「うちの子には楽しいことや好きなことだけやってほしい」という人もいますが、それだけしかやっていない大人なんていないじゃないですか。むしろ、幸せと苦しみが混ざり合っているからこそリアルなわけで、そういうネガティブな面をまったくごまかさずにデビュー当時から伝えてきたのが、BTSの楽曲です。大人は自分の人生を漂白したい願望があるのか、子どもにきれいな部分だけ伝えようとするところがあります。SUGAの一貫したアンビバレントな姿勢は、そういう大人の虚偽に対するカウンターになっているのです。

今年6月にリリースされた『Yet To Come(The Most Beautiful Moment)』のMVでは、砂漠に立つメンバーたちが映し出されます。彼らはそこで波の音に耳を澄ませながら、砂漠に居続けようとします。

BTSの楽曲において海と砂漠の比喩は希望と絶望の象徴として何度も登場してきました。このMVが語るのは、彼らが波打ち際に立ち続ける意志です。つまり、この世界ははじめから絶望であり、試練が絶えないけれども、それをごまかして安楽に浸ることはせずに、その現実世界のリアリティのままに幸せと苦しみを味わっていきたいという誓いがこの曲とMVには込められています。まさにBTSのアンビバレンスを凝縮したメッセージがそこには詰まっていました。

RM――貪欲に新しい表現を模索する

沈黙の音
存在の言語で会いましょう。
衝突と感覚と直感で。
 
私はあなたを定義し、分類する必要がありません。
あなたの表面だけを知りたいわけではないのですから。
沈黙の中で私の心が
あなたの美しさを映し出す。
それだけで十分です。
 
手に入れたいと欲するのではなく
あなたに会いたいというこの思い
その思いは
ありのままの私たちを許してくれます。
 
一緒に流れていこうと、1人で留まろうと自由です。
私は時間と空間を越えて
あなたを感じられるのですから。
─―クラーク・ムスターカス
次ページ言葉とアートをつなげて
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事