円よりヤバい「ポンド急落」でイギリス大わらわ 英新首相「減税の大ばくち」で経済は大混乱

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疲弊した労働党政権に選挙で勝利して首相になったサッチャー氏には、規制緩和策が効果を発揮するまで政治的な意味で不況に持ちこたえられるだけの時間的猶予があった。1982年のフォークランド紛争でアルゼンチンに勝利し愛国心が高まったことも、支持率の上昇に役立った。

「サッチャーは(首相になった)1979年当時、こう考えていた。(総選挙が近づく)1982年までに有権者が好む何らかの成果を出せばよい」。デイリー・テレグラフ紙の元編集長で、サッチャー氏について全3巻の伝記を書いたチャールズ・ムーア氏はそう語る。「リズ・トラスにはそのような時間がない」。

ムーア氏は、トラス氏と比べる相手としてはサッチャー氏よりも、アメリカのロナルド・レーガン元大統領のほうが適切だと話す。レーガン氏は減税をはじめとするサプライサイド政策を重視し、それらがもたらす財政赤字にはあまり関心を払わなかった。

ただし、レーガン氏はサッチャー氏と同じく、選挙で成果を問われるまでには時間的な余裕があった。レーガン政権は不況を耐え抜き、1983年になるとアメリカ経済は再び成長を始めた。

敵失に勢いづく労働党

対照的に、トラス氏が首相になったのは保守党政権になってから12年後、ジョンソン政権になってから3年後にあたる。遅くとも2025年の初めまでには総選挙を実施しなくてはならないということだ。ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)と内部抗争による分断にさいなまれていた労働党は、大混乱となった新政権の船出に活気づいている。中でも労働党に勢いを与えているのが、クワーテング氏による最高税率の引き下げ計画だ。これにより労働党は、格差問題で保守党との違いをくっき

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