円よりヤバい「ポンド急落」でイギリス大わらわ 英新首相「減税の大ばくち」で経済は大混乱
イギリスのリズ・トラス首相は減税とサプライサイド政策を訴えることで保守党の党首選挙に勝利し、スキャンダルにまみれたボリス・ジョンソン前首相の後釜となった。が、公約どおりに着手した自由市場政策のせいで、トラス政権は崩壊することになるかもしれない。
トラス氏の減税と規制緩和策に金融市場が衝撃を受け、イギリスの通貨ポンドは急落。同首相の政治生命も危うさの度合いを増している。
過激で間の悪い政策
トラス氏の保守党には不安が広がる。直近の世論調査で、野党・労働党に支持率で17%もの差をつけられたことが明らかとなったからだ。就任からわずか3週間目にして、トラス氏は極めて厳しい状況に立たされることになった。
労働党はここぞとばかりに、われこそが財政規律を重んじる党であるとのイメージを広めようとしている。金融専門家の間では1ポンド=1ドルのパリティ(等価)割れを予見する声が浮上。エコノミストや政治アナリストらは、イギリス経済の先行き不透明感が引き続き市場とトラス政権にとっての脅威になるとみる。
「次の選挙までにトラス氏が交代を迫られる可能性は大いにある」。保守党に詳しいロンドン大学クイーン・メアリー校のティム・ベール教授(政治学)は「本格的な党首選を再び実施するのは極めて難しいが、どのような可能性も排除できない」と話す。
首相就任からこれほどの短期間で窮地に陥った事実が裏付けるように、トラス氏の政策は過激かつ間の悪いものだった。インフレがほぼ2ケタに達し、イギリスを含む各国の中央銀行が利上げを進める中で減税を行えば、世界経済の異端児としてイギリスがマークされることになるのは目に見えていた。